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破・実らない恋

『初恋は実らない』  誰かが言ったそれはやはり本当だった。  悲恋に終わる恋ですっかり打ちのめされた千景は抗う力を失った。華奢な体はごろつきたちに引き()られるがままだ。 「待て、待て! 待ってくれ!! 金子はここに用意してある。これでいいだろう?」 (このお声は……)  突然隣から目の前から声がしたかと思えば、千景の体が四本の腕から解放された。代わりに力強い腕が千景の背に回った。  その腕はとても優しくあたたかなものだったから、すぐに虎次郎のものだと判った。 「なんだ。金、あるんじゃねぇかよ。へへっ、また金を用立てて欲しかったらいつでもどうぞ」  取り立て屋は最後にもうひと言付け加えると、直ぐさま去っていった。

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