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破・少し借りるぞ
「いや、そんなことはいいんだ。それよりもすまないが少し千景を借りるぞ」
「は、はあ……」
「さあ、千景。移動するぞ」
「えっ? うわあっ!」
言うが早いか、千景の体がふいに浮いた。
咄嗟の出来事に、千景は両腕を彼の首に巻きつけ、落とされまいと縋る。
「あの、虎次郎様? いったいどこに」
「ああ、それがな」
狼狽える千景に説明する虎次郎の声は弾んでいる。とても楽しそうだ。
「治療してくれる腕のいい医師とハシリドコロの草が見つかった」
「えっ?」
「お前、前に言っていたじゃないか。ハシリドコロと医師がいれば目は治るって。目、治したいんだろう?」
「ですがっ!」
「なんだ? 目が見えるようになりたいんじゃなかったのか?」
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