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結び・惚れた弱み

 虎次郎は満足げだ。 「……もう」  虎次郎には振り回されっぱなしだ。しかしそれさえも嬉しいと思うのは、惚れた弱みというやつだ。  これから自分は虎次郎と一緒に住む。  そう思うと、千景の胸の奥に熱が灯る。  千景は新たな線香花火に手を伸ばす。虎次郎の花火から火をもらうと、やがてこよりの先に花が咲く。千景は美しい花を散らすそれをうっとりと見つめた。                  完

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