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結び・慕情
「千景……おれもだ。一目惚れと言ったら信じるか? 綺麗な容姿はもちろんだが、過酷な状況でも少しも擦れていないお前に惚れた。なあ、おれとお前。お前のかかさんで畑を作って一緒に暮らさないか」
「虎次郎様はお旗本です。それは無理というものです」
「そうでもない。刀を捨てて農民になる侍だっている」
「でも!」
同性の恋はどうやっても実らない。
「好きだ。おれはお前を抱きたい」
「抱っ!?」
「千景、三つ数える間に返事しろ。いぃち、にぃい」
「そんっ、急に言われても!」
千景を急かす。その間にも、虎次郎は止まらない。三つを数え終わる直前――千景はとうとう音を上げた。
「はい!」
すっかり混乱している千景は大きく頷いた。
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