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笑み
「かーいちょーう」
「……桜和 」
「ちょっと何でそんなあからさまに顔顰 めんの」
「……」
顰めたくもなる。嫌な予感しかしないんだから当然だろう。
「今日は何を企んでる……」
こいつが『イイ笑顔』をする時は大体良からぬ事を考えている。
身を持って、たった3日で理解した。
「さっすが会長♪1ヶ月もすれば違うね!そう、今日は…………コレ!」
ジャジャーン、と言って取り出したのは──……
「おまっ! それ、提出期限明日……金曜までの書類……っ! 全面白紙ってどういう事だよ!!」
「そのまんま。伊吹 が今日の昼に間に合わないって言って押し付けてきた☆」
語尾に音符やら星やらをつけている場合ではない。
「何ですぐ俺のクラスに持ってこないんだよ!」
チラリ、と時計を見て、予想通りの時刻に絶望する。
「ああああ、もう!! 今放課後だぞ!? もう6時だぞ!? その書類、30枚中計28枚は書かなきゃいけないページなんだぞ!? 印を押すとこだけで10ヶ所以上あるんだぞ!?」
捲し立てる俺の慌て様も何処吹く風。本当にムカつくな、こいつ。
「書類の記入欄数、ページ数の把握、お見事〜」
「何を呑気な!!」
すると、桜和はニヤリと寒気のする『悪そうな笑み』を浮かべた。
「……打開策があるならさっさと言え」
「せっかちだなぁー」
「お前が呑気なだけだ!!」
「提出宛ての風見先生が今日から急遽出張で、提出期限が来週月曜まで延期になりましたー。……はい、安心?」
「もっと早く言え……」
『悪そうな笑み』を浮かべるときは、何か〝いい事がある〟ときだ。
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