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立場
俺、紫月 神楽 は現にこうして副会長、西条 桜和に振り回されているが、もともと俺はどちらかといえば弄る側の人間だ。
抵抗する奴はする奴ほど面白い。
どうにか逃げ道を探す奴をどんどん追い詰めていくのは心底愉快だ。
「そういう子は上を行く性格の悪い奴が現れると格好の餌食になるって事、教えてあげるね?」
一ヶ月前。
学校祭が終了し、選挙で当選して桜和にその言葉を掛けられてから俺の立場は一気に真逆になった。
弄る側から、弄られる側へ。
それは容易く、砂の城を崩すかの様に。
桜和と話したのは何もそれが初めてな訳じゃない。それまでは至って普通の接し方だったのだ。それが今じゃ、この始末だ。
今のように、期限ギリギリの書類を突きつけてきたり、生徒会室に鍵をかけて閉じ込めてみたり、いきなり擽ってきてみたり……。
まるで小学生のような悪戯だが、こちらとしては、困り果てているのである。
「かーいちょー。校内点検行こー?」
「ちょっと待て、まだ片付けが……」
「そんなん後でいーって。早くしないと廊下の電気消される」
廊下の電気なんて、後から幾らでも点けられるし、懐中電灯を持っていくんだから別にゆっくり片付けていても良かった。
寧ろ、そうするべきだったんだ。
帰り支度を整えて、コートとかも全部着込んで、鞄も持って廊下に出れば良かったんだ。
まさか、あんな状況に陥るなんて、微塵たりとも思わなかった。
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