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それとこれとは
確かに、言った。振り向かせてみろとか、大口叩いて言った。だけど。
「それとこれとは話が、別、だっ!!」
「一緒だよ」
「一緒な訳が無いだろ!! おい、鵜野 ! 固まってないでコイツを俺から離せ!」
「ひぇっ!?」
生徒会室で1年の副会長や1・2年の書記、2年の会計の目の前で堂々と迫っている副会長とそのターゲットが男であるという図にに怯えて固まっている1年書記、鵜野 愛里紗 を呼ぶ。
「えー、愛里紗ちゃん、今俺止めたら後でどうなるかわかってるでしょ?」
「ひいぃぃ…っ!」
……桜和の手により唯一の道は遮断された。
ごめんなさい、ごめんなさい、とずっと呪文の様に唱えながら真っ青と涙目の状態で頭を何度も下げる鵜野。酔わないのだろうか。
「神楽会長がシドロモドロになるのって桜和副会長が相手の時くらいデスからね。貴重なチャンスは一回も逃したくないデス」
にこやかに笑い(哂い)ながら着々と書類を消化していく1年副会長、佐神 矜持 。完璧に高見の見物である。
2年の書記はといえば、……この騒動の中、呑気に居眠り。
「つくちゃん爆睡デス〜」
月詠 伊吹 。いつも前髪で目元が隠れている。かと言って後ろ髪が長いわけでもなく。単に広い視界が落ち着かないらしい。
「桜和そのちょーしっ! あはは、目のほよーだぁ」
「嗣川 ……ああくそ、本当に何でこの生徒会はマトモなのが居ないんだ!」
「神楽会長には諦めることをオススメしマス」
腐女子、だかに部類される会計、嗣川 真澄 。コイツこそ一番アテにならない。
真澄だと? どこが澄んでるんだ。澄むどころか濁ってるわ。
「さぁーて、というワケで♪」
「…っ」
笑顔が黒い。後ずさりなどしきったおかげでもうめり込まんばかりに体の後ろを壁にくっつけている。
ああ、やっぱりあんな事はコイツに言うべきではなかった。
今日の昼休みに話したばかりなのにどうしてほんの数時間でここまで強行手段に出られる?いや、そもそもどうして思いつく?
考えても延々と答えの出ない思考のループを辿っていると顔の両側に手を付かれた。ついでに右足は若干前に出ていて出口に直行とは行かない。完全封鎖で救世主は無し。何だこの絶望的状況は。
「早速アプローチ開始だけど、準備はいーい? 神楽」
ああ、その楽しそうな微笑みが悪魔のようだ。
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