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西条 和音という人

 桜和の兄というのは、桜和とは違ったタイプのパワフルな人だった。  車を止めるなり本当にサイドブレーキを掛けたのかというほど勢い良く運転席を飛び出し、俺の手を握ってニコニコ笑顔でブンブンと手を上下に振る。腕がだるい……。 「こんにちは! 神楽くん、だよね! 俺は桜和の兄の和音(かずね)。宜しく!」  ……本当にハイテンションだった。これ、きっと地だ。ランナーズハイとか、そういうのじゃない気がする。 「よろしくお願いします……」  若干 和音さんのテンションに圧されて引き気味になっていると、例にもよって俺をお姫様抱っこしている桜和は眉間に皺を寄せてぼやいた。 「兄ちゃん さっさと車開けて。神楽 足折れてるかもなんだから」 「ああ!ごめんごめん、……はい」  そう言って車の後部座席の自動ドアを開く和音さん。 「ごめん神楽、痛いかもしれないけどちょっと脚、曲げて力込めれる?」 「ん……」  確かに力むと痛みが走ったが、大した問題ではない。  桜和はそのまま俺を奥の座席に座らせ、手前の座席にそのまま乗り込む。 「大丈夫、神楽?痛くない?」 「大丈夫……」  普段弄り倒されてるだけに、ここまで優しくされると戸惑ってしまう。 「後ろのお二人さん、あんまりいちゃいちゃしないでよー? お兄さん彼女いないんだからー」 「この前の年下の女の人は」 「別れた」 「またかよ」  察するに、この人典型的な女たらしだ。

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