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診断
「ヒビ」
バッサリ、いい笑顔で言い切られた。
「レントゲン見ても、踝に派手にヒビ入ってる。これで昨日歩いたの? 根性あるね〜。でも、もうそんな事しないでね」
「はい」
先生が指をさすレントゲンに映る足首は確かにヒビっぽいものが見える。
じっとそれを見つめる俺をおいといて、ギプスの準備とかをテキパキと進める先生。アッサリしている先生だ。
「あ、基本的に移動は車椅子ね」
「えっ」
松葉杖じゃ駄目なのか……?
「階段とかは仕方ないけど、極力避けるように。寝室が2階とかなら、布団を下に持ってきてもらうとかして欲しいな」
「親に話しておきます……」
ありがとうございました、と言って看護師さんに車椅子を押されて診察室を出る。
「あっ、神楽、どうだった? 車椅子ってことは……」
「ヒビだって」
「あー」
「車椅子の方は当病院で貸出しいたしますので、このままお帰り下さい」
にこやかに微笑んで去っていく看護師さん。入れ替わりに別の看護師さんがカルテを持ってくる。
「こちら、受付にお渡し下さい。会計準備が整い次第、お呼びいたします」
「はい」
カルテを受け取って受付に向かおうとしたところで桜和にパッと手元のカルテを奪われた。
「ちょ……っ! 桜和!」
「ここで大人しくしてて。受付には俺が渡してくるから」
「……」
俺の頭を撫でて悠々と受付に向かっていく桜和。
「神楽くん」
「はい?」
今まで黙っていた和音さんがふと口を開いた。
「君は桜和の『お気に入り』?」
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