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独占

「俺、嫉妬でおかしくなっちゃう。神楽のこと、滅茶苦茶にしちゃう。傷付けちゃう。……神楽に、嫌われちゃう」  しゃがみ込んでまた顔を隠してしまう桜和。  項に流れるストレートの髪を眺めながら少し考えて口を開く。 「……もし、そうして欲しいって言ったら──どうする?」  もし、嫉妬して欲しいと、滅茶苦茶にして欲しいと、傷つけて欲しいと、そう、言ったら──? 「……神楽って自己被虐趣味だったの?」 「違う」  もしこの身体に、精神に、一生消えない印を付けてくれたなら、俺は………。 「……何となく、そうして欲しいな、って思っただけ」  ふい、と顔を背ける。チン、とエレベーターが音を立てて止まった。『ドアが開きます』機械的な女性の声。ふっと視界が開けて目の前は駐車場。  無言で駐車場を進み、また俺を抱き上げて車に俺を乗せ、車椅子をトランクにしまうと桜和も乗り込んできた。 「………神楽、俺、前に……言ったよね?」  前髪が桜和の顔を隠して、上手く表情を読めない。  触れてくる手が熱くてゾクリと、悪寒とも違うよく解らない感覚が身体を走った。 「思春期男子ってのは特にタンジュンなんだよって」  そう言うと、がぶっと何の慈悲も容赦もなく、思いっきり首に噛み付いてきた。 「っい、……〜〜〜ッッ!」  ズキズキとした激痛にプツッと皮膚が切れる音がして、直後 舐められて吸われて、唾液が傷に沁みる。  気が付いたら俺はぎゅうっと桜和の服を握っていて、桜和は俺を抱きしめていた。 「………うぅ……っ」 「…っは、神楽……」  口を放して、そのまま腕の力を強めて俺を腕に閉じ込めてしまった。 「……これ、いつまでもつかな」  耳元で囁く声にまたゾクリと背筋を震わせながら、俺は顔を赤く染めていた。

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