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あやふやな境界線(一部NL注意!)
「あーりさちゃん」
「は、はい?」
雪に見蕩れていた鵜野を呼び寄せると、桜和は顔を寄せてひそひそ話をするように、しかしとんでもない爆弾を落とした。
「愛里紗ちゃんって、矜持のこと好きでしょ?」
「は、はい!?」
「おい、桜和……いきなり何言って」
「そうデスよー桜和副会長。それに、俺とウサちゃんはそれだけじゃないデス」
そう言って鵜野を後ろから抱きしめると、佐神はそのまま鵜野にキスをした。
「わぁお☆」
「!」
「……ですからあまり変なことしないでくだサイね?」
そう言っていい笑顔で微笑む佐神に抱きしめられたままの鵜野は目を回してプシューッと頭から湯気が出そうなほど赤面していた。
「あれ、神楽もちょっと顔赤い。他人のイチャイチャ見て恥ずかしくなるタイプ?」
ツンツンと頬をつっつかれて鬱陶しかったから、軽く払うように手を動かしたらその手を掴まれて甲にキスをされた。
「〜ッ!?」
「首のアレも消えちゃったしねー」
アレ──つまり、噛み痕は綺麗に消えていた。
桜和の嫉妬の証。歯形なんて生易しいものじゃなくて、れっきとした傷跡。俺が桜和に愛されてる証拠。
胸がドキドキして苦しい。気持ち悪くなるくらい早い心音がどうにも嫌いになれない。
言ってしまいたくなる。内側から「好き」が溢れて、今すぐここで全部明かしてしまいたい。でも、このふわふわしたあやふやなぬるま湯の中でたゆたうのが好きだから。もう少しだけ、このままでいたい。
桜和に甘えているのはわかっている。でも、あと少し、ほんの少しだけ。
片想いと両想いの淡い境界線でもう少し俺を歩かせてほしい。
──そんな思いは、すぐに崩れることになるのだが。
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