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嗜好
桜和は俺の襟元を少しだけ寛げて首元にちゅ、ちゅ、と啄むようにキスを落とした。
「……っん」
首筋に当たる唇と顔をつつくサラサラの赤茶の髪が擽ったくて少しだけ身を捩ると、頭と胴体を抱き竦められて動けなくなってしまった。
「お、桜和……」
「んー……?」
「くす、ぐった……」
「……」
変な声が出そうなのを必死に堪えた訴えはスルーされた。
「お、か!」
桜和の唇が喉仏の上を滑る。ほんの一瞬だけ離れた唇は、だけどすぐに戻ってきて、喉仏に軽く噛み付いてきた。
「ひ、ゃ……っ」
本能的な恐怖と桜和の吐息や舌の熱さにゾクリと背筋が震える。
震える手で桜和の頭を押し返そうとするけど、力が入らなくて、仕返しとばかりに桜和の噛む力が強くなったのにまた背筋を震わせるだけに終わった。
「……神楽の首、すっごい好き」
熱の篭った声で、そう囁かれた。
「なに、言ってんだよ……っ!」
「だって……」
その先に、言葉は続かなかった。
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