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捕食

「……っあ、ぅ……桜和、やめ……」  別に今、性行為に及んでるとか、そういうわけじゃない。  首にキスされて、たまに噛まれてそれに俺が変な声を出してしまっているだけ。  桜和の唇が俺の喉に触れる度にぴくぴくと体が震える。もうかれこれ10分くらい経過していて、一向に終わりそうにない。  大体何だよ、首が好きって。どんなフェチだよ。カミングアウトがどさくさすぎて危うく忘れそうな性癖だよそれ。  あと、わざわざあいつらが出ていった理由って、お前がキスしたいとか言ったからじゃなかったか? 「おーか、生徒会、まだ仕事残って……」 「んー……」 「ひ……った……」  がぷ、と噛まれて痛みに涙を滲ませる。流石に今回は血が出る程じゃなかったけど、完璧に痕がついてると思う。  解放されると同時にズルズルと椅子から滑り落ちそうになるのを桜和に抱き留められて、そのまま膝の上に横向きに座らされる。 「ま、た……見えるところ……」 「美味しそうで」 「俺は食料じゃない」 「いや、でも某有名女優は幼少期チューリップの球根とか食べてたし」 「戦時中の状況と一緒にするな。俺は人間だ」  この勢いだと本当に捕食対象にされそう。  桜和の膝の上から逃げ出してドアまで歩く。出て行ったメンバーを探しに行こうとドアノブに手を掛ける。 「……あれ」  ガチャガチャと回すけど、あかない。 「神楽?」 「……閉じ込められた」 「また?」 「…………」  押しても引いてもあかない。2度目。今年2度目。前回からまだ2ヶ月しか経ってないんだけど。  桜和も寄ってきてガタガタと引いたりしてみるけどあかない。ドアの隙間に確かに鍵っぽいのが見える、外からかけられたらしい。  あいつら……いや、確かに急に誰か入ってきたら困るし、多分佐神あたりの配慮なんだろうけど……内側から開けれないことに気付いてほしかった。 「あーらら……どうする、神楽」 「どうもできないだろ……大人しくあいつらが帰ってくるのを待つしかない」 「まあそうだね」  取り敢えず残った仕事を消化することにした。

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