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第三章・3

 正吾は人差し指を立てて、朋の唇に当てた。 「周囲には、秘密にしてある。誰にも喋っちゃ、ダメだぞ?」 「なぜ、ですか?」 「跡継ぎやら相続やら何やら、面倒なことになりそうなんだ」  残された時間を、そういったしがらみで潰したくない。  正吾は、そう答えた。  寂しそうな、顔だ。 「わずかな余生、私と一緒に過ごしてくれるか?」 「はい」  後はもう何も言わずに、朋は正吾に口づけた。 「朋……」  正吾は、朋の唇を貪った。  勝気に振舞っていても、間近に迫る死への恐怖はぬぐえない。  朋の体にすがり、その若さを、生気を貪った。 「だ、めです……。ソファでなんて……!」 「いや。今、ここで、したい」  午後の明るい日差しが降り注ぐリビングのソファで、正吾は朋を組み敷いた。

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