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5日目⑩
同じデパートの7階のレストラン街で、小敏と煜瑾は行列が出来ている洋食店に向かった。
「人気店なのですね」
煜瑾が感心したように言うと、小敏は急いで予約シートに名前を書きに行く。
「さあ、名前も書いたし。あと5組くらいだよ。並んで待とう」
「5組も?」
名門・唐家の至宝として大切に育てられた煜瑾は、食事をするために列を為すということを長く知らなかった。
「この店じゃ少ない方だよ」
小敏が何故か自慢げにそう言うと、煜瑾はただでさえ大きな目をさらに丸くした。
「そうなのですか。そんな人気店で、絶品のトマトサラダがいただけるのですね」
期待たっぷりの煜瑾に、小敏はちょっと周囲を見回し、子供のように無邪気な笑顔で煜瑾を振り返った。
「ほら~、ここに食品サンプルがあるよ」
小敏の指さした方へ眼をやった煜瑾は、思っていた物とは違うサンプルに驚いた。
「え?トマトサラダって…」
***
意外にも客の回転は早く、おっとりとした煜瑾は熱心な小敏の説明を聞いているうちに、あっと言う間に順番が回ってきた。
店内はレストランと言うよりも、レトロな「洋食店」と呼んだ方が似合うような落ち着いたインテリアだった。新人のインテリアデザイナーである煜瑾は、興味深そうに周囲をキョロキョロしている。
カウンターから調理の様子が見渡せるオープンキッチンは、最近は上海でも人気だ。だが、ラッキーなことに長身の2人はカウンター席ではなく、ボックス席に案内された。
ゆったりと座り直し、煜瑾はニコニコして小敏の顔を見た。
「注文は、任せますね」
「うん。もう決まってるんだ~」
注文を取りに来た店員に、小敏はディナーのセットを注文した。
「オードブルはトマトサラダとスープのセット。メインは百年ハンバーグのセット2つ。どちらもパンで。デザートは焼リンゴとテリーヌショコラ。飲物はブラックのホットコーヒーと、ホットミルクティー」
自分の好みを知り尽くしている親友に、煜瑾はニッコリとした。
その高貴さと愛らしさに、店員も思わず笑顔になる。
「それと単品でエスカルゴと鶏の唐揚げ」
「また、そんなに食べるのですね…」
相変わらず食欲旺盛な小敏に、煜瑾は苦笑した。
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