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5日目⑨
「あとは…、玄紀とか包家の叔父さまとかへのお土産かな?」
「玄紀は、しばらく上海に戻ってこないようなので、食べる物はダメですね。むしろお料理好きのおとうさまに、何か…」
煜瑾が思案し始めると、小敏も何かを思いついたようだ。
「じゃあさ、デパートに行こうよ。なんでもあるし、上海にも支店があるんだし、何かあれば対応してもらえるはず」
「ああ、それはいい考えですね。香道のレッスンのお礼に、茉莎実さんにもお土産を買いたいです」
2人は意気投合し、そのまま寺町通りを南下した。
***
「やっぱり、デパートは間違いないよね」
小敏は、地下の食品売り場で、あれもこれもと購入していく。
「わあ、キレイですね~」
煜瑾は、和菓子や和食のお弁当の彩りの美しさに感動していた。
その横で小敏は、ここのケーキが美味しい、ここのおはぎが美味しい、ここのアラレはお土産にピッタリだ、など煜瑾に紹介しながら、試食をしたり、賞味期限を確認したりして次々と買い込んでは荷物を増やしていく。
煜瑾も、小敏が絶対に美味しいと勧めるバウムクーヘンと日本らしい雅やかな包装の米菓を唐家へのお土産にと買った。
「包家の叔父さまには、こんなのどうかなあ」
小敏が煜瑾に紹介したのは、色とりどりの野菜が液体と一緒にパックされたものだった。赤いラディッシュ、緑の葉野菜、白い山芋に、見慣れたキュウリもあった。
「これは京都の漬物だよ。試食してみて」
やや強引な小敏に押されながら、煜瑾も面白がって次々と試食をしてみた。
「さあ、そろそろ晩御飯にしようか」
「晩御飯?」
お昼といい、オヤツもしっかり食べて、その上デパ地下で試食をしまくったため、あまりお腹が空いていない煜瑾はちょっと戸惑った。
「ボクと煜瑾2人だけの夕食は今夜が最後だからね。ボクの一番のおススメを食べに行こう!」
「一番のおススメ?」
それほどお腹は空いていないと感じていた煜瑾だったが、小敏の一番のおススメと言われて、目を輝かせた。
それが分かっていたかのように、小敏は笑顔を浮かべる。
「煜瑾は、トマトが好きでしょ?」
「はい、トマトは大好きです」
素直な煜瑾が明るく答えると、小敏も大きく頷いた。
「そこのトマトサラダが絶品なんだよね~」
そう言って、チャーミングなウィンクをした小敏に、煜瑾は輝くばかりに高貴な笑みで応えた。
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