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3.いざ廃城へ

聖女は普段外に出ない特別な人物であるため、今回は専用の馬車で向かうこととなった。今回はレイヴンとテオドールと聖女だけという少数精鋭なので、3人で同じ馬車に乗る。 テオが当然のように俺の隣にドカリと座り聖女が窓際へと座ったので、レイヴンは2人の大人に挟まれていた。 「聖女様、体調に問題はありませんか?今回はお付きの方もいませんし、何かあればすぐに仰ってくださいね」 「ありがとう。外には出ないけど大丈夫よ。散歩はよくしているし、そこまでか弱くはないから」 「か弱い訳ねぇだろ。中身は野郎なんだからよ」 テオドールがまた余計なことを言うが、聖女もひと睨みだけで堪える。この調子で現地まで続くのかと思うとレイヴンは少し胃が痛くなりそうだった。 +++ 「着いたわね」 「見た目は本当に朽ちた廃城といった雰囲気ですが……」 「何か気持ち悪ぃ。なんつーか、嫌悪感がすげぇな」 見えない何かが取り憑いてくるような、気持ち悪さを感じる。それは聖女もテオドールもレイヴンも。3人とも同じで神妙な表情をしていた。 目の前の廃城は手入れがされていないため城壁は痛み、蔦が絡みついている。 「気味が悪いわね。素早く済ませてしまいましょう」 「それは同感だ。仕方がねぇから中に入るが、壊さないようにっていうのが面倒なんだよなぁ」 「だからこその俺たち、ですから。師匠ならできるでしょう?」 俺が期待の眼差しでテオを見上げると、ニヤリと笑う。 「まぁ、そうだな。ならチャッチャとやっちまうか」 「そのために来てもらったのだから。よろしくお願いするわ」 「はい。では、行きましょう」 3人は顔を見合わせて半分開かれたままの門を潜り、朽ちた廃城へと足を踏み入れた。 +++ 大扉には鍵は勿論かかっておらず、半開きになっていたことから子どもならばスルリと中に入ることは可能だったのだろう。 城内は暗く、とても探検気分で来られるような状態ではなかったが、よほどお転婆なお姫様だったのだろうという結論に落ち着いた。 空気も埃っぽく足元の床は石なのかところどころ傷んで凹んでいる。荒れてはいるが、崩れてはおらず外よりかはマシには見える。 レイヴンが灯火(ライト)の魔法で辺りを照らす。 明かりで少し落ち着く気分にはなるが、やはり胸の詰まるような違和感がある。 「この息苦しさは何でしょうか……?」 「息苦しさと気持ち悪さこそが浄化が必要とされる悪しき者ね。魔物でも厄介な闇属性持ち。実体のないもの、力のみでは難しい相手」 「俺らも多少は使えるものもあるが、浄化となるとな。この灯火(ライト)も光魔法の一種だ。ただ、威力は辺りを照らすくらいだからこのままでは攻撃としては使えねぇな。完全に滅するには聖属性が必要だしよ」 聖女とテオドールが簡単に説明をしながら、静かに歩を進めていく。 足音だけが城内に響くが、今のところは何も出てくることもなくシンと静まり返っている。 「モヤッとしたものは感じるけれど、そこまでではないわね」 「浄化すべき者は今のところは見当たりませんが……」 「しっかし、まあまあデカい城だよな。部屋数も結構ありそうだしよ。どこに行けばいいのやら……」 テオドールが面倒そうに頭を掻いていると、首元にチクリと何かが刺さる感触がした。

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