16 / 19

第16話

男の膝が股間を押し上げ、ヒナの身体がピクリと跳ねた。 持て余した熱は今更無くなるはずも無く、益々敏感になってゆくが、皮肉にも男の発せられた言葉によってほんの少しだが、冷静になっている自分も存在していた。 「ひっ……っん」 ーーこいつ、やっぱり名前ーー。 「ーーーー。」 男は何か言いかけたが、口を閉じると真っ直ぐヒナを見据え(おもむ)ろに掴んでいた手を自由にした。 あっさりと拘束を解かれたヒナは呆気に取られたのもつかの間、自身の行動に驚く事になる。 「ァアっ!! あ、ァっ!」 ーー?! 快楽を欲していた身体は素直で、考えるより先に熱く猛った欲望を握り締めていた。 待ち望んでいた快感に自身の鈴口からヨダレ垂らし悦ぶーー上下にせわしなく往復させ、水音が冷静な脳内も掻き乱していく。 「アァァっ! ハァっ! やっ……んあ!」 ぐちゃぐちゃになった脳内で、藁にもすがる思いで空いた右手を男に伸ばし助けを求めた。 この際誰でもいい、この衝動を止めてほしい、そんな思いだったがそう上手く行くはずもなく、舐め上げられた指から新たな快楽を与えられる。 「やァっ!! アァっ、あっ!」 ーーや、めろ 時折覗かせる理性が本能に掻き消され、何度もそれを繰り返す。 やめろ! いやだ!ーーそんな簡単な一言がどうしても出て来ず、ただただ媚びる様な声で鳴く事しか出来ないヒナに男は問い掛けてきた。 「ーーヒナくん。 苗字はおみくじの(きち)に、野原の野で、吉野(よしの)くん?」 もう早くこの熱を吐き出してしまいたい、その一心で薄れていた理性がまた顔を見せたーーこの男から逃げ回っていた時、しきにり思い出していた祖母との約束だ。 一瞬掠めた理性が首を縦に振らせたーー本当は違ったが、今出来る精一杯の抵抗だった。 「……本当に?」 細めていた男の瞳がすっと開くと、その冷たさにヒナは思わず視線を外した。 身震いした拍子に一気に高まった熱を高みへと誘うように竿を擦る動きは早くなるーーが、またもや男はその手を掴み欲望から遠ざけた。

ともだちにシェアしよう!