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聖也side

「また...やってしまった....」 夕方。大学から帰宅するなりベッドにひれ伏した。 昨夜の残り物の唐揚げなんかじゃない。 亮に食べてもらおうと朝から揚げた唐揚げだった。 ついでにとばかりの強気な口調だった。 亮にはきっとそう伝わったんじゃないだろうか...。 「馬鹿馬鹿馬鹿、僕の馬鹿ー!」 不意に床に投げ出されたままのバッグからスマホが鳴り出した。 ふらふらと立ち上がり画面を見たら、なんでも相談室からだ。 毎月の支払いは済んでいたはずだけれど...行き違いかな? 「はい。イキリうさぎですが...」 「遠藤です」 思いがけない相手に即座にその場に正座してしまった。 「えええ遠藤さん!?なななんで、僕の番号」 「申し訳ありません。顧客名簿から...イキリうさぎさん、私のことが気になっている、と言っていましたよね?」 じんわり汗ばんだ膝に置いた手のひらを自然と握りしめていた。 「は、は、はい...」 「....亮さん、でしたか。彼氏さんよりも私が気になりますか?」 「な!なんで亮...僕の彼氏の名前を」 「そりゃ、いつも、私に彼氏さんの相談をされるとき、必ずと言っていいほど、亮、と先に名前を呼びますから、イキリうさぎさん」 「え?そ、そうなんですか...?」 遠藤さんがしばらく間を置き。 「イキリうさぎさんも気づかないうちに、なんでしょうね」 「そ、そうなのかも、しれません...わかりませんが...」 「実は...私もイキリうさぎさんのことが気になっています」 「えっ....」 思いがけない遠藤さんのセリフに拍子を抜いた。 「でで、でも僕には、りょ、亮がい、います...」 きゅ、とセーターの胸元を握り締めた。 「....もうすぐクリスマスですね」 「再来週...ですね」 「彼氏さんへマフラーを編んでる、と仰ってましたね、進んでいますか?」 「え、ま、まあ...」 「....唐揚げ」 「はい」 「私にも食べさせたいと仰っていた唐揚げですが、今夜は如何ですか...?」 「こ、今夜、ですか」 ごく、唾を飲み込んだ。 確かに遠藤さんに会いたいと思ったし、唐揚げが上手く揚がり、遠藤さんにも食べてほしいと思ったのは確かだ...。

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