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浮気になるのかもしれない...?

僕のアパートの近所にある公園で遠藤さんに会うことになった。 遠藤さんの自宅もわりと近いんだとかで。 唐揚げを作り、弁当箱に詰めた。 期待もあり楽しみな半分、不安も大きい....。 「亮に黙って遠藤さんと二人きりで会うとか....浮気にならないのかな...」 20時過ぎ。 ベンチに座り、弁当箱を入れた断熱材の付いたポーチを抱き、遠藤さんを待った。 「風邪をひかないように暖かい格好でいらしてくださいね、私もすぐに向かいますので。カイロはありますか?」 そう遠藤さんが気遣ってくれ、ダウンジャケットにデニム、マフラーも巻いた。 12月半ばともあり、吐く息は白い。 「....あれ?聖也?」 聞き覚えのある、いや、ありすぎる声に顔を上げて、驚愕で目を見開いた。 「亮....なんで」 「いや、この近くに用があって。公園を通り過ぎようとしたら偶然、ベンチ見てさ、聖也に似てる気して。なにしてんの?」 亮の笑顔に...胸が痛む。 「う、ううん、ちょっと気晴らしというか...」 隣に座ってきた亮を見ないまま、答える。 「ふーん。気晴らしかあ」 ....なんだか、落ち着かない....。 こうしている間に遠藤さんが来たらどうしよう....。 「ほら。手、寒いだろ」 亮は身につけていた手袋を外し、さりげなく俺の両手に嵌めてくれた。 「で、でも亮が寒いんじゃ」 「俺は平気」 夜空を見上げる横顔を見上げる。 「しっかし冷えるな」 「ま、まあ、12月だしね」 「だな。てか、なんかいい匂いしない?」 「いい匂い...?」 あ、と膝に置いた唐揚げの入ったポーチを思い出す。 「夕飯まだだから腹減ってるせいかな」 亮が屈託なく笑う。 「....そ、そうなんだ...食べる?唐揚げ....」 「唐揚げ?」 「う、うん...」 「....食べたいけど、いいの?」 「いいの、て....?」 真剣な眼差しの亮に釘付けになっていた。 「遠藤さんに食べて欲しいんじゃないの?」 「....遠藤さん、に。待って、なんで亮が遠藤さんを知ってるの....?」 にや、と亮が狡猾な笑みを浮かべた。 「さあ、なんでだと思う?」 しばらく考えたのち、 「ま、まさか....」 「うん?」 「亮、ま、まさか、え、遠藤さんの弟とか...?」 亮がきょとんとなり、そして笑った。 「なんだ、それ。な訳。他は?」 「他....。あ!」 「なに?」 声が震えそう....。 「と、盗聴、とか....」 亮が呆れ顔に変わった。 「....お前んちに行ったこともないのに?」 「あ、そっか....なんでだろ...」 亮と遠藤さんの接点...。 「わからない....」 「俺だから」 「....なんで?」 「遠藤は俺だから」 ....頭ん中、真っ白だ。 遠藤さんが、亮? 「なんでも相談室。俺のバイト先なんだよ」 まさかの真実に言葉を失ったまま、亮の瞳を見つめた。 「もう、遠藤の方の俺じゃなく。俺に直接、相談してよ。 料金、特に高くはないけどさ、俺は面と向かってお前の悩みを聞きたいし、 一緒に解決出来ることは一緒に考えて、そうして一緒にいれたら、てそう思ってる」 亮の優しい言葉に、まだ疑心暗鬼な僕は亮の優しい眼差しを見つめたまま...。 「....遠藤じゃなくて俺に食べさせてよ、唐揚げ。今日、食べたけど、美味かったし」 明るい笑みに俺は涙は溢れたりしなかった。 嬉しい、ただそれだけ...。 「....うん」 小さく頷くと、亮も満面の笑みをくれた。 こんな真冬の中、いつまでも公園にいる訳にもいかないし、寒空の下で唐揚げ、て訳にもいかず、意を決して。 「そ、その...僕んち、来る?唐揚げも温めたいし」 嬉しそうな亮に、思わず俺も笑顔になった。 勇気を振り絞って良かった。

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