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僕の家
遠藤さんがまさかの亮だと知った僕。
今更、以前のようにイキれない、いや、イキる必要もなくなった。
不意に亮に手を握られ僕のアパートまで亮と並んで歩く。
「そ、その、狭いけど...」
「お邪魔します...わ!こたつ!」
最近寒いから出したこたつに亮が声を張った。
ダサいと思われるかな...とか思ったら。
「めっちゃ懐かし!昔よくこたつで寝てさ、良く怒られてたんだよなあ」
そう言うと亮はこたつに潜り込み、思わず頬が綻んだ。
「僕も。寒かったでしょ?温かい飲み物、なにがいい?」
「んー、なにがある?」
「紅茶、緑茶、ココアと、あとハーブティー」
「色々揃えてんだな。じゃ、ココア」
「唐揚げの前にココアとか」
キッチンに立ちながら微かに笑う僕。
「別にいいじゃん。てか、マフラー編んでる、て言ってたよな?クリスマスまでに間に合いそう?」
マフラーのこと、遠藤さんにしか話してはない。
遠藤さんはやっぱり亮なんだな、と思い知る。
だけど、嫌じゃない。
ちょっと照れくさい。いや、かなり照れくさいけど...。
「うん、一応 ...。でも気に入って貰えるかはわかんない...」
「再来週かあ、めっちゃ楽しみ。聖也へのプレゼントが気に入って貰えたらいいけど。てか、どうする?どっか店、予約するか?」
「え?えっと...」
「部屋でまったり過ごすか。ケーキやチキン買って」
「...うん。はい、ココア」
「サンキュ」
一緒に僕の部屋で。一緒にこたつに入って。
一緒にココアを飲んで。
....幸せすぎる。
「....なんで泣く」
優しく亮が苦笑する。
「だ、だって...今までごめん...酷い態度とってた...」
向かいに座っていた亮が移動してきてよしよし、と頭を撫でてくれた。
「謝らなくていいよ。俺こそ、遠藤は俺だ、て黙っててごめん」
ふるふると涙を拭いながら首を横に振る。
「聖也」
「...ん?」
顔を上げると顎を持たれ、唇を合わされた。
唇を離した後も亮のひたむきな眼差しから視線を逸らせない。
ファーストキスは少し涙でしょっぱくて、でも思っていたよりずっと甘かった。
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