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第1話

今日は久しぶりに定時に仕事が終わり、電車を降りた俺は帰路に着いていた。 先日の特売の日にスーパーで買い出ししていたし、スーパーに寄る必要は無いか、と夕飯の支度を考えながら歩いていた。 と、その時だ。 「ママ」 唐突にスラックスが掴まれ、見下ろすと、かなり小さな男の子が愛らしい大きな瞳をうるうるさせ、俺を見上げていた。 「....ママ?」 「あいたかった、ママ」 ...言っておくが、俺、木村誠は女装癖は無い。 しかも、今はグレーのスーツ姿。 ママに間違われる程、髪は長くもないし、特別、女性的な顔立ち、て訳でもない。 「....迷子、かな?」 腰を折り、視線を合わせて頭を撫でると、子供ながらの力で抱き締めてきた。 「ママー!」 そして、泣きまくる。 どうしたものか、と、思っていた矢先。 「理一!何処に行ったかと思ったら!」 俺より僅かに年下だろうか、若い父親らしき男性が焦った様子で走ってきた。 「す、すみません!こら、離しなさい!理一!」 「やーだー!ママ見つけたのー!」 申し訳なさそうに謝られ、男性が男の子を引き剥がそうとするが...離れない。 ぐーきゅるる... 不意に大きな腹の虫が鳴いた。 ぷ、と吹き出した俺は、 「お腹すいてんのか?」 男の子に話しかけると、うん、と恥ずかしそうに頷いた。 「うちのマンション、ここから近いんです。帰宅したら夕飯にしようと思っていましたから、御一緒に如何ですか?」 この子の父親に提案した。 「で、でもお邪魔じゃないですか...?」 そうして、幾つ?と尋ねると、ピースサインされ、2歳だとわかった男の子、理一とその父親、佐藤陽平、俺の二つ下、23歳だとマンションに着くまでにわかった。 なに、子持ちの女性を自宅に招くのは問題があるだろうが、同じ男同士だ。

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