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誠さんの実家で

誠さんに連れられ、少し離れたショッピングモールに行き、理一の歯磨き粉や歯ブラシ、着替えなどを購入。 全て誠さんが支払ってくれた。 「すみません、本当に...ありがとうございます」 「いや、構わないよ。なにかお菓子でも買ってくか...まだ固形的なのはしんどいかな... プリンとか?シュークリームはどうだろ」 結果、シュークリームを詰めてもらい、プリンも購入し、誠さんの実家へ戻った。 「ただいま」 「おー、おかえり、誠」 「あれ、父さん、帰ってたんだ?」 「ああ、理一が来てる、て聞いてな」 「あ!おかえりー、パパ!まことちゃん!」 リビングの床にぺたん、と座り込み、片手でシュークリームを掴み、ホイップクリームで口の周りがベタベタな理一が満面な笑顔。 額にはシートが貼られてる。 途端、けほ、と理一は咳をした。 「大丈夫か?理一」 「たまに咳は出るけど。熱もだいぶ下がったの」 「被ったな、シュークリーム」 誠さんがシュークリームの入った箱を掲げて苦笑した。 「にしても...買ってきたの、父さん?」 「ああ、そうだが?」 理一の座るテーブルの前には所狭しとシュークリームだけではなく、フィギュアやシールの入ったお菓子やら、フルーツの入ったゼリー、チョコレート、メロンまである....。 「...父さん。甘やかしすぎだろ、さすがに」 「まあいいじゃないか、久しぶりに会うんだし」 「まあ、初孫だものねえ。理一、遠慮なく食べてね」 「うん!」 「ほら、理一、ほっぺ、クリームいっぱい付いてるぞ」 嬉しそうにお義父さんが理一の口の周りをウェットティッシュで拭っている。 「じゃ、シュークリームとプリン、冷蔵庫に入れとくわ」 「あ、夕飯、どうする?理一が食べたいものでいいわよね?」 ....理一中心に回ってるな。 まあ、いいことなんだけど。 「な、なんか、その、すみません。お気を遣わせてしまって」 「なに言ってるのよ、私たちも理一が来てくれて嬉しいし楽しいんだから。陽平くんはなにが食べたい?」 「あ、え、なんでも大丈夫です」 「僕、シチュー食べたい!グラタンもいいなあ、ハンバーグも食べたい、なやむー」 「ふふ、だったら理一のぶんはお子様ランチ風にしましょうか」 「おこさまらんち?うん!よくわからないけどそれ食べたい!」 「あら、理一、お子様ランチを知らないの?誠、今度、理一にお子様ランチ、食べに連れて行ってあげてちょうだい」 「....わかった。今度、理一も連れて映画館でアニメ観ようと思ってたし、そのときでも連れてく。モールにあるよね、多分」 ....ご両親も誠さんも。 理一を可愛がってくれて本当に嬉しい。 「陽平くんも座って。誠も」 お義母さんたちの向かいに僕も誠さんの隣に座る。 「誠、誠のマンション、部屋、余ってるでしょう」 「まあ、2部屋空いてはいるけど。なんで」 「陽平くんに住んでもらったら?誠がいたら安心だし、家賃も浮くでしょ?陽平くん」 「えっ」 思わず声が出た。 誠さんの...部屋に、同居...? 「誠、昔から料理や家事、得意でしょ?確か、余りに家事や料理ができるせいで出番がないだとか負けるだとかでよく彼女さんから振られていたし」 「...最後は余計。まあ事実だけど。はい、陽平くんも食べなよ」 「あ、は、はい」 目の前のシュークリームを手にした。 「陽平くんも少しは楽になるでしょう?使ってやって?誠で良かったら」 にこ、と誠さんのお母さんが微笑んだ。 「使う、て...言い方。でも、まあ、悪くはないか。頼って欲しかったし」 「えっ!?まことちゃんがママになるの!?やっと!?」 僕以外、みんな大笑いした。 「こら!理一、変なこと言わないの!」 「へんなこと?」 小さなフォークでメロンを持ち、理一が首を傾げる。 「ママではないけど。一緒に住もうな、元気になったら。陽平くんが良ければだけど」 「え、で、でも...ご迷惑じゃ...」 「なにかあったときにいいでしょ。今回みたく、理一が風邪ひいたときでも俺がいれば陽平くんもあまり負担にならないだろうし」 うんうん、とお義父さんやお義母さんまで、微笑を浮かべ、何度も小さく頷いた。 ....誠さんと...同居なんて。 思いもよらない展開だ。 でも...確かに助かるのは違いない。 「あ、よ、よろしくお願いします。家賃は半分、お支払いしますので」 「いいのよ。この子、まあまあ稼いでるのに、特に使い道もないんだから」 「...母さん。褒めてんのか貶してんのかわかんないって」 みんな爆笑し、僕も微かに笑った。 明るくて優しくて、本当、いいご家庭なんだな、て痛感した。

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