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それが運命というのなら 第1話 | 藤美 りゅうの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
それが運命というのなら
第1話
作者:
藤美 りゅう
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第1話
天音理月
(
あまねりつき
)
は自宅アパートで大学の課題をこなしながら、無意識に手首にある歯形を撫でた。もうそれは理月の癖だ。特に考え事をしている時に無意識に触っているようだった。歯形を見る度に、自分がオメガである事を思い知らされる。そして唯一体を繋げた男を思い出すのだ。 理月は抑制剤が効く体質なのか、元々の体質なのかは不明だが、ヒートを起こしたことがなかった。だが、ただ一人、あるアルファの男にだけ理月のオメガのフェロモンが反応し、激しくヒートを起こした。後にも先にもあんな激しいヒートを起こしたのはそれ一度きりだった。 その相手の名は
宝来将星
(
ほうらいしょうせい
)
といった。 理月は青い瞳とブロンドの髪色を持つオメガだ。両親は日本人であったが、父方の叔父が理月とそっくりだった。父方の祖母がスウェーデン人との混血で、五人兄弟の末の弟である叔父だけが突然その血を受け継いだ。理月もまた、その血を色濃く受け継ぎ、叔父と同じ青い瞳にブロンドの髪色を持って産まれた。そしてその叔父はオメガだった。叔父の血を受け継いだ理月もやはり、オメガだった。予想はしていたとはいえ自分がオメガだと確信した時、しばらく絶望感に打ちひしがれた。 理月がオメガとして生まれたのは、叔父の血筋である事は間違いない。確かに叔父を恨んだ事もあった。だが、叔父は自分と同じ容姿の理月を可愛がってくれたし、理月もそんな優しい叔父が好きだった。今でも恨む事も嫌いになる事もできない。そのくらい叔父には懐いていた。 だが叔父はある日突然、自ら命を絶ってしまった。理由は、その当時の番の相手が別の人間と番ったのだという。オメガは一度番を作ると、相手が死ぬまで番を変える事ができない。番った相手を余程愛していたのか、絶望した叔父はあっさりと死を選んでしまったのだ。 理月がオメガであっても誰よりも強くなろうと決心したきっかけだ。叔父の事は大好きだったが、《そんな事》で自ら命を絶ってしまった叔父に失望したのも確かだった。 叔父ほどの中性的な美しさはなかったが、それでも整った顔立ちと鍛えた体から伸びる手足は長く、オメガにしては176センチと身長には恵まれていた。大抵のオメガは170センチもない華奢な体つきをしている事が多かったが、理月の外見は充分にベータ、もしくはアルファであると誤魔化せる事ができた。 理月は立場的にも身体的にも劣ると言われていオメガにもかかわらず、誰よりも強くなる努力をした。それを証明したのが
行徳
(
ぎょうとく
)
学園の入学だ。理月が通う行徳学園は悪の吹き溜りとして県内では有名で、腕に自信がない者は在籍するな、と言われている高校で理月はそこの頂点に君臨した男だった。 理月は性別をベータと偽っていたがまさか、行徳学園のトップがオメガであるなどと誰もが思わなかっただろう。 そして行徳学園と並んで危険視されていたチームがあった。黒いライダースの背中には三つの頭を持つ『冥界の番犬』と言われている犬を背負い、バイクで街を走り抜けていくバイクチーム『ケルベロス』 この、『行徳学園』と『ケルベロス』が県内の二大勢力と言われていた。 当時のリーダーは、宝来将星という男だった。 同時期に二大勢力の頂点に立つ男として、互いに意識はしていた。 だが、行徳学園には代々受け継がれている事があった。 『ケルベロスに絶対に手を出すな』 先輩からの言葉は不良たちにとって絶対である。故に、ケルベロスと行徳学園は決して交わる事がなかった。 それにケルベロスはあくまで、『バイクチーム』であると主張している。自ら喧嘩を売るような愚かなメンバーはいないが、売られた喧嘩は買う主義で、ひとたび喧嘩を売られれば相手を完膚無きまでに叩き潰す。徹底的な潰しに周囲の者は皆閉口するのだという。 行徳学園の先輩たちはきっと過去に身をもって、ケルベロスの恐ろしさを知った出来事があったのではないかと理月は予想していた。 将星とは間近で顔を合わす事はなかったが、街中では時折あの目立つライダース軍団を見かける。特にリーダーである宝来将星は、代々リーダーが受け継ぐと言われている、白いライダースを身に纏っていた為、その白いライダースは嫌でも目に入った。 将星がアルファだとすぐに分かった。自分とは違う厚みのある鍛え抜かれた逞しい体躯。それを際立たせるかのような褐色を帯びた肌。そんな体には至る所にタトゥーが入っているという噂だ。高身長で黒いライダースパンツが長い足の将星によく似合っていた。顎ほどまで伸ばした黒髪は青みがかかっており時折一つに束ねていた。鋭い切れ長の目はひと睨みされれば、皆が怯んだ。それは自分でなくとも、彼を見ればアルファであるのは一目瞭然だった。 理月は将星の姿を見ると、体が熱くなり武者震いを起こす。 《いつかあの男と差しで勝負がしたい》 元々喧嘩好きの理月は、喧嘩で負け無しと言われている将星を強くライバル視していた。周囲もきっと、《行徳の理月》と《ケルベロスの将星》が勝負をしてどちらが勝つのか興味があったはずだ。 自分だって、そうしたいのは山々だ。だが、相手がアルファの疑いがある限り、オメガである自分は近付く事はできなかった。 だが、そんな理月の運命を大きく変える事件が起きた。
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藤美 りゅう
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