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エピローグ
ということで、五年後。
長い眠りについた王太子が目覚め、ロウェンツェ王国は若き王陛下の力によって、魔法石産業が盛り上がり、さらなる躍進を遂げていた。
あれから国の貢献に尽力したということで、リオにはマーリン勲一等賞を賜られた。
眠い目をこすり、リオはのしかかる重さで目を覚ました。目の前には小さな身体がまたがって、ニコニコと笑みをむけている。小さなローエンというべきか、だがそのやんちゃさはどちらにも似ておらず、どこから持ってきたのかいつも頭を悩ませてしまう。
「リーオ! チューしよ!」
チューとさくらんぼのような唇が顔面いっぱいにせまり、よけようとすると頬にチュッと唇があたった。
「ホ、ホリン!」
「ふふん、ホリングワースだもん。オーハヨウは? ちゃんと言ったらどいてあげる」
「ほ、ほ、ホリン……お、お、おおはよう」
あわあわしていると、ひょいっと小さな身体が摘みあげられ、膝が軽くなった。
ホリンの小さな身体の背後に、巨大な黒い影が見える。見上げると、ローエンがものすごい形相でこちらをみている。
「ホリングワース。親をからかう暇があるなら、剣の鍛錬の時間をもっと増やしてやろう。士官学校まで残り数週間だ。教師陣に恥をかかせないよう、私がきっちりマナーまで叩き込んでやる」
ローエンがホリンの小さな額にデコピンを食らわせると、べーと舌をだして対抗している。その仕草には思い当たるフシがあった。
「父上!」
「ろ、ローエン。おかえり。遠征から帰ってきたんだね……」
リオはまた一段と大きなお腹をさすりながら、のそのそと起き出した。
最近は寝ても寝足りないほど眠気に襲われ、朝もままならない。それでも早起きを心がけて、生活リズムは整えるように心がけていた。
「ああ、さっき戻ったばかりだ。まったく、リオをからかうなんて」
「ちえっ。てっきり明日帰ってくると思っていました。売春宿には寄らずにまっすぐ帰ってきたのですね」
ぎくりとリオの顔がこわばった。
どこでそんなことを覚えてきているのか、心の底から心配してしまう。
たまにマベール王子と遊んでいるらしいが、よろしくないことまで覚えている気がしてならない。
「ホリン! どこからそんなっ!」
ケラケラと笑って、ホリンはささっと身をひるがえして部屋をでていった。
あとでマベール王子に文句の手紙を使い魔にくくりつけて送ろう。
「無事に帰還されてよかったです」
リオは苦笑いをして、ローエンをホリンとともに抱きしめた。
「きみたちのことが心配でしょうがなかった。もう一人家族が増えるんだ。いてもたってもいられなかったんだ」
ローエンはリオの頬にキスをして、腹部をやさしく撫でた。その両目は緑に輝いて、熱を帯びて愛を宿していた。
「もう、二度ときみを手放さない」
ぎゅっと抱きしめられ、糸のような細い目がポロっと涙がひとつ落ちた。
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