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第1話

 パパのことをはっきりと意識したのは、熱を出して動けなくなった俺を抱きあげてくれた時のことだった。  大雨と雷がやまない日、俺はパパに抱えられて森の奥にある洞窟に来た。  力の入らない身体を軽々と持ち上げられてびっくりした。俺、もう子どもじゃないのに。  身体だってれっきとした大人だ。それなのに俺を連れて洞窟まで来てくれた。  悪寒に震える身体を包み込む腕はすごくたくましくて、胸がぎゅって苦しくなる。  その違和感は風邪のせいだと思ってた。そう思おうとしてた。 『大丈夫だ、ルカ。俺がついてる』  この森の狼たちをまとめる長、グランが言うんだから、きっと大丈夫。  それでも俺は不安で、パパのぬくもりを求めて顔を胸にこすりつけた。  パパの身体は筋肉に包まれていて、俺よりも“雄”らしい体つきをしてる。  ピンと立った耳もふさふさのしっぽも真っ黒で、艶々していてかっこいい。  俺はというと耳もしっぽも白に近い灰色で、なんだかパッとしない毛色だ。  ――ああ……パパはかっこいいなぁ。  雨で濡れた前髪が色っぽいし、金色の目には吸い込まれてしまいそうな力を感じる。  大雨や風、雷の怖い音がいっぱい聞こえてきて不安になっていても、パパがいたら大丈夫。 『ぱ、ぱ……』 『今は眠るんだ』  頭を撫でてくれる大きな手。胸のぬくもり。聞くだけでドキドキする低い声。  俺はパパのことが、俺たち狼の長、グランが大好きだ。

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