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第28話

「そりゃあ降ろすさ。俺たちの寝床にな」  ルカをごろんと寝転がらせて、その上にグランが覆い被さる。  逃れられないように手首を掴まれてしまって、ルカはその力強さにグランが本気で自分を求めていることを知り、本当にただの仲良し親子ではなくなったのだと自覚した。 「ずっと我慢してたんだ。父親の俺が、こんなことしちゃいけないって」  血は繋がっていなくても、親子として過ごしてきた時間が長かったからグランも思い悩んでいたのだろう。ルカも同じだ。けれどその枷は外された。お互いを求め合っていい。ふたりは親子の絆を超えた深い愛情で結ばれているのだから。 「ん……」  また口づけをされて、ルカはそっと目を閉じた。誰ともキスなんてした事がなかったけれど、本能でこういう時は目を閉じるものだと感じ取っていた。 「口開けて、舌出してみろ」  甘やかな命令にお腹の奥の秘めた部分がずくんと疼く。目を閉じたまま舌を遠慮がちに突き出したら、熱いグランの舌がそこへ絡みついてきた。  こんな口づけ、ルカは知らない。 「はふ……ぅん……っ」  呼吸がうまくできなくて、焦って息をしようとすると喘ぐような声が溢れてしまう。キスが下手くそだと思われたらどうしよう、と思っていると、グランはルカの頭を軽く撫で、「可愛いな」と囁いた。 「ごめんなさい……俺、全然上手じゃない」 「そうか? 頑張って舌を絡めようとしてくるのが一生懸命で可愛かったぞ?」 「ぅう……」  喜んでいいのかどうかわからない。だが、そんなことを考えている余裕はすぐになくなった。グランの手が服の下に忍び込んできて、脇腹を撫でまわし始めたのだ。 「ひゃ、ぁっ」  グランの手は脇腹から下にさがって、細いくびれを堪能するように両手でねっとりと撫でてくる。グランがすることのすべてが初めてで、戸惑いを隠せない。しかし、グランの手によってどんどん身体が熱くなり、与えられる刺激によって官能が高まっていった。 「あ、あ……だめ、俺……っ」 「だめなんかじゃない。とても可愛いよ」  恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだった。敏感にグランの指先で感じてしまって、初めての感覚に頭が混乱している。  少しずつ怖くなってきたルカは縋るような目でグランを見た。  それだけで気持ちが伝わったらしい。グランは触れていた手を離して少し困ったように微笑んだ。 「……困ったな。嬉しくなって思わず夢中になってた」 「パ…………ぐ、ぐらん」 「おー、えらいえらい。ちゃんと名前で呼んでくれるんだな。ありがとう」  額にキスが降ってきて、大事にされていることに涙が溢れそうになる。そんな優しいグランのことを怖がってしまい、なんだか悪いことをしているような気分だった。 「怖がらせたな、すまん。お前があんまり可愛いから」 「ううん、俺がこういうの……全然、わかんなくて……」 「何も知らない?」 「……知らない」  誰にも触らせたことのない身体をグランに捧げられることは幸せだと思う。けれど、一度も経験したことがないことをするとなると、緊張と不安がないまぜになって震えが止まらなくなってしまった。 「そうか。……ああ、大切にしたいって思ってるのに、今すぐ抱きたくて仕方ない」  グランの切羽詰まった声にルカは戸惑った。いつもと違う。普段のグランはいつだって落ち着いていて、大人で、かっこよくて――なのに、目の前にいるグランは本能に突き動かされるようにしてルカを求めている。 「ふ、ぁ……あ」  グランの熱に当てられたのか、目の前がくらくらする。  ルカはふわふわする頭で何を考えたのか、思わずぎゅうう、と抱きついてグランの首元にかぷりと噛み付いた。  甘噛みをされたグランは一瞬驚いた顔をしたが、首元で一生懸命顔を擦り寄せてくるルカが愛おしくなってその身体を強く抱きしめ返す。 「お前、せっかく我慢しようと思ってたのに……そんなふうに煽ってくるなよ」  ふたりの身体がぴったりと密着する。中心の熱塊がぐっと押しつけられて、ルカはぴくんと肩が震えた。

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