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第27話

「……俺の言葉の意味、ちゃんと通じたか?」 「えあ……っ、えっと……」  口がうまく回らなくて、ルカは真っ赤になったままわたわたと慌ててしまった。  ちゃんと通じている。ちゃんと通じているからこそ、こんな状況になっている。  その姿を見て、グランは困ったように笑った。 「驚かせたな。すまん」 「なんでっ……そんな、急に……」 「急じゃないぞ。ずっとお前のことを大切に思っていた」 「……子どもとしてじゃなく?」  深く頷くグランに、ルカはますます混乱してしまった。嬉しいのに、素直に受け止められない。グランが嘘をつくメリットなんてないけれど、だからと言ってすぐに信じてしまうのも怖かった。  ルカは胸元で手をもじもじさせて、何度も「ええと、ええと」と繰り返す。自分も同じ気持ちだと伝えたいのに、うまく言葉が出てこなかった。 「俺は、お前がずっと俺のそばにいてくれることだけを願っていたよ」 「っ、っ……!」 「ルカの気持ちが聞きたい」  どくん、どくんと心臓の音が聞こえてくるようだ。きっと顔も真っ赤になって、情けない顔をしているに違いない。ルカはきゅっと目を瞑って、伝えるべき言葉を探した。  グランのことが大好きだ。それは父親としてのグランではなく、一匹の狼として。雄々しい姿に憧れを抱き、その腕に抱かれたいと思っている。 「ルカ……?」 「っ、俺も、パパのことが大好きでっ……ずっと、ずっと一緒にいたいって思ってる……!! 父親としてじゃなくて、憧れの人、として……」  言葉に詰まりながらも、溢れてくる感情をそのままグランにぶつけた。伝えるということがこんなにも難しいことなのかと思い知らされ、軽い目眩に襲われる。 「――ルカ」  熱のこもった声で名前を呼ばれ、まつげを震わせながらルカはそっと目を開く。目の前にグランの顔があって驚いてびくりと身体を跳ねさせてしまった。 「ルカ。ルカ……俺の大切なルカ」 「……っ!」 「お前に触れたい」  吐息を含んだ声で囁かれて、もう我慢できなかった。ルカは潤んだ眼差しをグランに向けて唇を開いた。 「……ぐ、グラン……?」 「はは、上出来だ」  戸惑いの混じった声だったが、グランは満足したようだ。嬉しそうな顔を見て、ルカはきゅんとしてしまう。想いを告げなければ、きっとこんな表情を見ることはできなかっただろう。  ――すごい、しあわせだ……。  心がじゅわりと熱くなって、グランに触れている部分がどんどんとろけそうになる。 「口づけをしても?」 「えッ……! ええと、ええと……!」  グランはルカの答えを待たず、唇をそっと重ねた。やわらかいルカの唇を楽しむように、角度を変えて何度も何度も触れる。緊張で身体を強張らせているルカの頭を撫で、ふわふわの耳を指先でなぞっていく。 「あ、あ……っ」 「上手に感じてるな。可愛いぞ」 「っー……!! やだぁ……」  グランに縋り付いて、これ以上キスができないようにルカはグランの肩口に顔を埋めた。可愛らしい抵抗に、グランは小さく笑いをこぼす。  いじらしいルカへのお仕置きと言わんばかりに、グランは縋るルカの身体を軽々と持ち上げてしまった。 「わぁっ!!」 「こらこら、暴れんな。落ちたくないだろ?」  抱っこされて、ゆっくりと寝床へと運ばれる。  ドキドキが頂点に達して、ルカは首を横に振りながら「おろしてぇっ……!」と悲鳴をあげた。

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