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第4話

「………治朗には近付くな」 夜、僕の身体から離れた樹生は満足そうな溜め息を吐いた後、内緒話をするように声を潜めて僕に囁いたが、あいにくシャワーを浴びる為にベッドから下りようとしていた僕は、その言葉を聞き逃してしまった。 「……………え?」 「治朗には近付かない方がいい」 振り返った僕に、ベッドから起き上がった樹生は真剣な顔で告げる。 「……………治朗?」 小首を傾げる僕。 「濱塚だよ、濱塚治朗……あいつにはあまり近付かない方がいい…多分、だけど…あいつ、同室の會澤惠と付き合っている…と思う………それなのに、その事を隠して他の奴らと付き合っているみたいだし…だから、彰も治朗には気を付けろよ。近付くな。話しかけられても無視しろ。いいな?」 樹生の的外れな忠告に内心、呆れながら…しかし、顔だけは和やかに部屋に備え付けのシャワールームへと向かう。 (この寮で唯一、いいところは各部屋にシャワールーム完備ってところだな) 「…大丈夫だよ、僕は濱塚のタイプじゃないと思うし…むしろ気を付けなければいけないのは樹生の方だと思うけど…だって、どちらかといったら、僕より樹生の方が濱塚のタイプだよ、きっと…」 「………ふ、ふざけてても、そ、そんな冗談、言うな!俺は彰一筋って知ってんだろ!!俺は彰以外と付き合うつもりはないからな、っていうか、彰以外は抱けないし!!」 僕の言葉にギクリとした顔をしたのは一瞬、すぐに顔を赤くして怒り始める樹生に僕は「ごめんごめん」と笑いつつ。 「そんなにムキになって否定すると、よけい怪しまれるよ」 釘を刺す事も忘れなかった。 シャワールームへ入る直前、樹生の顔が少し青ざめて見えたのは部屋の照明が暗いせいじゃない。 あれだけ見詰められたら、いくら鈍感な朴念仁でもさすがに気付くだろう。 治朗の話を始めたのがいい証拠。 治朗の事を意識し始めたって事だから。。 治朗は可愛い………見た目だけなら。 たとえ男子とはいえ、そんな可愛い治朗にアプローチされて悪い気はしないだろう。 ………狙われているのは自分の身体とも知らないで。 樹生は考えた事もないだろうな。 まさか治朗に抱かれる対象として見られているなんて。 治朗のタイプは治朗自身とは真逆なタイプ。 見た目格好良くて、自分が抱かれるとは露ほども考えていない………まさしく樹生みたいな奴。 相手が抵抗すればするほど燃えるし、感じないように我慢している顔を快感でどろどろにするのが面白いと話しているところを聞いた事がある。 次のターゲットは樹生という事も………。 -もちろん、僕は知らない顔をする事にした。 樹生はいけないと言われている事や駄目だと言われている事、禁じられている事に惹かれる傾向がある。 そのせいで幼い頃は樹生に無理矢理巻き込まれて何度、親に叱られた事か。 樹生は信じられない運の良さで逃げて、怒られるのはいつも僕ひとりだった。 -学校では僕と樹生は公認の仲になっている。 その事に、樹生が物足りなさを感じている事も気付いていた。 僕を抱きながらも、抱かれる事に興味を持っている事も。 オマケに樹生は自分で思っているより、快感に弱い。 一回、治朗の手に落ちると、後はズルズルと墜ちていくだろう。 (…………………………早く墜ちてしまえ)

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