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第3話
悩んだ末に僕は樹生から離れる為、彼の成績では絶対、入る事のできない高校を志望校とした。
樹生はスポーツは万能だが、勉強の方はいまいちだったから。
これで諦めるだろうと思ったんだ。
ところが。
何をとち狂ったのか、樹生は自分もその高校に入ると言いだした。
そして、その高校に入る事ができたら自分と付き合えと僕に迫ってきた。
樹生の成績じゃ絶対、無理だと確信していた僕は今度こそ彼から解放されると思い、頷いた。
そうでもしないと高校が離れても、家が近所という事もあり、どこまでも付いてきて諦めないだろうと思ったから。
先生からも、その高校に行くのは無理だと太鼓判を押されていたし、大丈夫だろうと。
だが、僕は忘れていた。
樹生は障害があればあるほど燃える性格で、オマケにすこぶる運がいい人間だという事を。
なんと、樹生は絶対無理だと言われていた進学校に合格してしまった。
(なんて事だ!!)
『山勘が当たった!!』と飛び上がって大喜びしている樹生を囲んでのお祝いムード一色の皆を横目に、僕は頭を抱え込んだ。
(冗談じゃないぞ!!)
やっと樹生から解放され、自由になれると喜んでいたのに一転、樹生と同じ高校に進学………オマケに樹生と恋人同士!!
悪夢としか思えない。
さらに悪い出来事は続くもので。
全寮制の進学校に入ってみれば、なんと同寮で同じ部屋。
家が近所だから樹生と顔をなるべく会わせないようにとの家から遠い全寮制の高校を選んだ事が悔やまれる。
………せめてクラスが違う事だけが唯一の救い。
彼は運命だとはしゃいでいたが、僕はこの悪運にめまいがした。
運のいい樹生みたいな人間もいれば、運が悪い僕みたいな人間もいる。
それを断ち切るために、この高校を選んだのに………。
第一。
(同じ部屋なんて、僕の貞操の危機じゃないか!!)
僕は寮に入った初日は恐くて眠る事ができなかった。
樹生が僕のベッドに入り込んできたらどうしようとそればかり考えて………。
樹生と僕とじゃ、体格的にも体力的にも差がありすぎる。
だが、毎日ビクビク過ごしていた僕とは対照的に樹生はよく眠りよく食べ毎日、元気だった。
僕を夜中に襲う事もなく、それこそ僕が拍子抜けするくらい、普通に生活をしていた。
ただ、樹生は僕との仲を恋人同士だと吹聴していて、いつの間にか僕達は学年どころか、学校では公認の仲になっていた。
そして。
彼は僕が隙を見せる日を待っていたのだろうか。
ひとりで気を張り続けるのにも限界がある。
-ある夜。
いきなり、襲われた。
それこそ、本当に突然で。
抵抗なんかできなかった。
苦しいだけの、悪夢としかいいようのない出来事だった。
だが、お互い初めてという事もあってか初日は失敗に終わる。
僕が痛い思いをしただけで終わった。
でも。
-悪夢は終わらない。
失敗した事でますますムキになったのか。
それから毎夜、樹生は僕を襲い、成功させようするのに必死だった。
それこそ、滑稽なほどに。
成功しない原因のひとつに、僕が無言の抵抗をしていた事があると思う。
でも、僕が樹生に抵抗するなんて考えた事もないだろうし、僕の中に入れようと必死な樹生は、気付いてもいないみたいだった。
しかし、結局は-。
その時の事は思い出したくないし、口にしたくもない。
次の日の樹生の浮かれようったら、見られたものじゃなかった。
反対に僕の中には樹生への恨みが染みのように広がって………。
その日から樹生は毎晩、僕を求めてくるようになった。
もちろん、僕の意思などないも同然。
樹生が僕を抱く度に広がる、僕の中の黒い染み。
(なんとかしなくては………)
僕の中が黒い染みで覆われる前に-。
僕の中の黒い染みに、僕が覆われる前に-。
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