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第8話

-高校を卒業しても樹生と治朗の関係は続いていた。 僕は相変わらず2人の関係には気付かない振りを続けた。 お陰で僕が樹生とは別の大学へ進学すると告げても何も言われなかったし、怪しまれる事もなかった。 最初から樹生には進学する候補にその大学は入れておいたし、ひとり暮らしをする事も言っていた。 心配なのはただひとつ。 高校の時みたいに僕と同じ大学へ進学すると言い出すんじゃないか、それだけだった。 が、樹生も治朗との関係があり、僕に対して後ろめたいのか、ドキドキしていた僕が吃驚するほど何も言わなかった。 肩透かしを食う感じになった僕は、だが、心底ホッとした。 だって……………。 ………実は樹生に進学すると告げた大学はカモフラージュ。 本当は全然、違う大学へ進学する。 もちろん、通うふりはするよ。 樹生の手前。 でも………。 住む事になったと樹生に教えたアパートにも、荷物は必要最小限の物しか置いていない。 その時がくればすぐ、ただちに身、ひとつで逃げられるように。 その為に、誰にも本当の事は言ってない。 両親にも。 さすがに両親に嘘を吐くのは気が引けたけど。 仕方がないよね。 僕の両親と樹生の両親は親友同士で。 両親に言ったら、全部、樹生にも筒抜けだもん。 言えるわけないよ。 でも。 これで。 準備は整った。 後は-。 -その時を。 樹生と治朗の仲を僕が知ってしまう、その時。 それも、できれば樹生が僕に言い訳できないほどの決定的瞬間を-。 樹生も治朗を求めていると。 2人の関係を全く知らなかった僕がその事実を知り、凄くショックを受けるような。 そんな。 徹底的な。 劇的な場面-。 そんな場面を作る事ができれば。 最高だ。 …僕と違う大学へ進学して、アパートも別々に暮らしている樹生は高校の時ほどの緊張感は持っていないはず。 僕にバレていないと高をくくって、安心しきっている樹生は治朗を自分のアパートに泊める事も平気になっているだろう。 元々、深く考えないたちだから。 きっと、どこかでボロを出す。 っていうか。 隙だらけじゃなかろうか。 多分。 治朗が樹生のアパート行った日は、いつでもそのシーンに出くわす事ができるだろうとは思うけど。 でも、ただ、治朗が樹生を抱いているシーンを見るだけじゃ面白くないし、言い逃れされるかもしれない。 だから、言い逃れできないほどの。 樹生が治朗に縋り付いて、全身でしがみ付いているシーンを見る事ができたら……………。 僕に見られたと知った樹生が立ち直れないほどのショックを受ける場面を………。

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