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4.「ナカだけでイケましたね」
私の胸筋を枕にして、マリアが幸せそうに眠っている。赤子が玩具を掴んで離さないように、私のくたびれた陰茎を片手に包んで。
初夜を試して以降、定期茶会の日にはこうやって睦みあう時間が加わった。学園でも、共に過ごす時間が増えた。
少し湿った髪に、そっと指を絡める。本人は薄い灰色がお気に召さないようだが、私は好きだ。
普段の静かな色の時も。私の上で獰猛に汗を滴らせ、天蓋内の数多の灯りを受け銀色に透ける時も。
そうだ。学園の卒業パーティーの装いは、光沢のあるシルバーグレイの生地に変更しよう。私だけが知るマリアの色を身に纏いたい。
私はもうすぐ卒業し、離宮から公爵邸に一人戻る。王都で文官の職を転々と研修していく予定だ。
マリアが卒業するまで、二年。この家に迎えるまで、更に一年。
「うっ! ……マリア、おはよう」
急所をキュッと握られて、恋人の覚醒を知る。
「……ん……まだ、起きたくないです……」
マリアは私の体を横に転がし、縋りつくように背中から抱きしめる。二人のしっとりした肌が隙間なく添う。
「まだ離れたくないです」
すっかり目覚めた昂りを私の尻に擦りつけ、甘えてくる。
求められる幸せに陶酔する。思い切って、初夜の前倒しを提案してよかった。
「おいで」
「はいっ!」
勢いある返事とは裏腹に、ひどくゆっくりと、マリアが私の内側に分け入ってくる。キュウキュウと欲しがり蠢く穴に惑わされず、丁寧にゆっくりゆっくりと。
「ああ……マリア……マリア……」
一度馴染んだ後孔にはもどかしい。少しずつ堕ちていくような、少しずつ登りつめるような、ふわふわとした気持ち良さに狂う。
腰に両腕を回され、奥を軽く突かれただけで、私はあっさりと達する。
「ノエ様、ナカだけでイケましたね」
力無い私の陰茎を、華奢な指がやわやわと撫であげる。
快楽の余韻に蕩けている間にも、ゆるりと抽挿が再開される。上肢は寄り添ったまま中程まで抜かれ、敏感なところを掠め、また優しく深く穿たれる。
ああ、私は愛されている。こんなにも。
涙が零れたのは、行き過ぎた快感のせいだけではないだろう。
「……ノエ様?」
頬に手を当てられ、目元を拭われる。私は振り向かずその手を取り、甲に口づけを落とす。
これから先どんな未来が訪れようと、一生マリアだけを愛することを誓う。そんな想いを込めて。
【終】
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