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『わぁ、これはデカい! 貴方様が女を抱くのは無理かもしれないわぁ』  私の陰茎を一瞥し、女はこう言い放った。実技を教えるべく用意されたのは、当然のように、男に抱かれる役割の高級娼婦だった。 『ならば、私が抱かれるというのはどうだろうか?』  ふと閃いたままを口にしてみると、良い案に思えてきた。  ただ政略結婚の相手として、人生の相棒になるのではない。マリアくんと体を繋げ、互いに夫であり愛妾にもなってしまえばいい。  私がマリアくんを抱けないサイズならば、マリアくんが私を。 『男性と御結婚が決まってるのね、なるほどぉ』  その女娼はなぜだか男同士の営みにやたらと詳しかった。もちろん実技は出来ないが、微に入り細に入り私に知識を施した。凄い。 『じゃ、最後にこれを試してみてね』  堂々と手渡されたのは、男の性器を模した張形。  驚く私の反応に、女は笑った。 『さすがに未通の男性がいきなり使うには、大きすぎるかしらぁ? でも、練習用にちょうどいいサイズよぉ』  こんなに太いものを体内に入れるのか。いや、私の陰茎大きさより、かなりマシだ。やはり、マリアくんに私が挿入するのは無謀だろう。 『最初は痛いし苦しいけど、慣れれば気持ち良くなるのよぉ』 『そういうものなのか?』 『うんうん。ちゃーんと練習して、上手にできるようにならないとダメなの』  婚約者との茶会のため定期的に公爵邸に戻る機会を利用して、その度に一人で鍛錬を積むことにした。マリアくんと夫夫二人きり、穏やかに暮らす日を夢見て。  洗われたての体に、香油を纏わせた指先を這わせる。蕾を恐る恐る開くと、異物感が酷い。何かを間違えている気がする。  節くれだった己の手ではなく、マリアくんの繊細な指ならいいのに。そう思った途端、胎の奥底が熱くなった。  張形をあてがい、慎重に腰を沈めると確かに鈍い痛みがある。だがそれも最初のうちだけだった。  これがマリアくんならば。そう無理やり思い込んで、鍛錬を続ける。回を重ねるごとに、徐々に快感が勝りはじめる。 『んっ……マリアくん……イイッ』  吐息と共に自然と漏れた名に、尚更興奮した。あられもない姿を晒し、羞恥心も忘れ自慰に没頭する。硬いものが私を貫き、理性をグスグスに溶かしていく。 『マリア……ああっ!』  絶頂を迎え快楽で痺れた思考が、次第に晴れてくる。我に返った私は愕然となった。いくら何でも淫らすぎる。  今は、マリアくんから敬意を含んだ想いを向けられている。知られれば軽蔑されるかもしれない。しかし、このまま二人の距離感が変わらなければ、ただの婚約者のままだ。  そう、婚約者。  政略的に決められた婚約者に、私は執着に近い恋をしていた。

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