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 レア姫を通して私の意向が反映されたのだろう。父上が決めてきた政略結婚相手は、ロバン伯爵家子息だった。  大きな政治閥には属さない。小ぶりながらも堅実な領地経営。他の伯爵家と繋がりを保つことで、中央にも安定的に影響力のあるロバン家。世事に疎い私にも、良い縁に思えた。  婚約者として出会ったマリアくんは、とても貴族らしい子どもだった。勉強はそれなりで、お洒落大好き噂話大好き。毎日楽しいことを探しているような、苦労知らずの箱入り息子。  だが、不快ではなかった。外見に心砕いていると言っても、浪費して派手派手しく着飾っているわけでもない。  他人の噂をしていても、どうやら広めて良い悪いを線引きして口にしている。座学は嫌いだそうだが、そのあたりのマナーはしっかり身についている。 『ノエ様、ノエ様! 聞いてくださいませ!』  口下手な私の隣で、毎回身振り手振りを交えて夢中でおしゃべりする姿は、むしろ好ましい。  私は甘やかされて育ったが、特段将来を嘱望されてはいない。為すべき責務もなく、隔離されたかのような離宮で規則正しく過ごすのみ。そんなつまらない私に、マリアくんはキラキラとした眼差しを向けてくれる。  その真っ直ぐな瞳に、次第に惹かれていった。 『……そこで、騎竜に乗った将軍が、空を駆けて、すっぱーんと一太刀で薙ぎ払ったそうなんです!』  御年配ばかりのサロンに招かれたそうで、マリアくんは活き活きと昔話の報告をしてくれた。  あまり印象に残らない見た目ながら、マリアくんは老若男女問わず人気者だ。いつの間にか自然と、どんな人の輪にも寄り添える。  胸がチクリとした。きっと私に対するのと同じ輝きで、他の者たちを親しげに見つめているのだろう。  閨房術の座学を初めて受けた時、その痛みはより強くなった。  マリアくんは、可愛らしい御令嬢たちとも親交が深い。私と婚姻を結んだ後、他に愛する人を側に迎える。そんな未来が心に浮かんだ。

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