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本章最終話
……ガコーンと壮大な鐘の音が響き、その音は二人の注意をステンドガラス越しの時計の針に誘った。様々な色が密集して作られたそのガラスの板の中、隣同士に並ぶ異なる色の上に映し出された互いの顔、それはまるで互いが別の世界の生き物なのだと神から告げられているようだ。リリの肩を抑え、ダニエルは彼女と並ぶように一歩横にずれた。彼女の顔が映っているガラスと同じガラスの中に自らの顔を映し、リリをそっとこちらに抱き寄せてこう言った。
死神
「生前、ウィルとアレンはある赤子をケルスの目から匿っていた。……二人が命を捨ててでも守ろうとした赤子だ。その赤子はこれから起こるであろう災厄を防ぐためのたった一つの鍵だと言われていて、その存在を知るどの種族もみな狂ったように欲しがっていた。ウィリアムが蘇った今、ケルスは再びウィルに赤子の居場所を吐かせようと試みるだろう。リリ…」
魔女
「……?」
死神
「俺はお前のためなら、死神界を捨てられる。」
「そんな事は言わずとも知れている。」彼女はそんな余裕のある笑みを見せ、透き通るガラスの中でダニエルの目を見つめた。
魔女
「…守るのよ、あの子達の宝物を。」
ガラスを見つめたままリリがしかっりと握ったダニエルの手は、彼女の手を包み込んで握り返した。
死神
「もうお前にも分かってるだろうけど……」
丁度同じ刻、ご馳走の並ぶ大きなテーブルを囲う者達を珍しく真剣な面持ちで見つめる父はこう言った。
エドワード
「もうお前達にも分かっているだろうが、ここから先は……」
「「後戻りは出来ない。」」
Dusk to Dawn 第三章
-END-
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