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第12話

【side 翔】 最後を告げる監督の合図 スマホに手を伸ばすと 20:30を過ぎたところだった 今日は朝6:30集合でとても長丁場 それなのに疲れを感じなかった スマホを見たのは時間が気になったからじゃない あきから連絡があることを ちょっと期待していたんだ だけど画面には業務連絡を告げる メッセージだけだった マカロンのお礼を口実に あきに電話をしてみるけど繋がらない 真っ直ぐ家に帰ればいいのに 事務所へと向かっていた 社長室は暗かったが 修平さんが使うレッスン室と その下の階のフロアには電気がついていた ダンスレッスンの部屋に近づくと 話し声が聞こえてくる 「山岡さん、手をどけてください」 あきの声だ! 慌ててレッスン室のドアを開ける その光景に怒りが爆発しそうになる 「優太、あきから手を離せ!」 優太が壁にあきを追い詰めている 手を離すこともなくこっちを向く 「あぁ、翔さん なんなんーですか?  昨日彰くん貰っていいです? って聞いたじゃないですかぁ。 そんな怖い顔してどうしたんですか? 別にあきは翔さんのものじゃないでしょ?」 感情を押し殺して優太の手を壁からどけると あきを引っ張り出して抱きしめる 震えていた 「あきに何した?」 「失礼ですねぇ〜。まだ何もしませんよ! ストレッチしてたから 身体伸ばしやすいように押してあげよっかな と思ってちょっと話しかけたけど? 断って逃げようとするから 追いかけたら壁側に行くし?そしたら かわいい顔して見つめられたらねぇ? キスのひとつやふたつくらい したいじゃないですかぁ 笑笑 翔さんのせいで出来なかったじゃないですかぁ あーあー」 「…っ おまえ…」 怒りで言葉にならない 俺たちの声を聞きつけて修平さんが 部屋に入ってきた 「おい!こんな時間に何しにてんだ! 優太、ちょっとこい! 翔、こっちは任せとけ!」 そう言うと 優太を部屋から引きづり出してくれた あきの背中を撫でながら聞いてみる 「あき? 大丈夫か? 怖い思いさせてごめんな…」 目にいっぱい涙を溜めたあきが 俺を見つめる 言葉が出てこないのか 頷くのが精一杯みたいだった しばらく抱きしめて背中を撫でていると あきが顔を上げる 「…翔さん…翔さんは何も悪くないのに 謝らないで……。 それに…翔さんが来てくれなかったら…」 そう言いながらまた目に涙がたまる 「あき?」 「…あの…僕…その キスとかしたこともなくて… なのにキスぐらいいいだろって… 押さえつけられたら抵抗出来なくて 怖くって…ごめんなさい… こんなじゃダメなのに…」 「どうして? 何がダメなの?」 「だって…役とかでするかもだし… まだ脚本?見てないし…わかんないけど… 翔さんだったらいいけど… 翔さんじゃない人としたりするかもしれないし… 相手が山岡さんとかっだったら 断ってちゃだめなのに…」 「あき? 俺とだったら キスしてもいいみたいに 聞こえちゃうよ?」 「はっ…」 急に真っ赤になる なんてかわいいんだろう あきが不安にならないように そっと隣に座らせて話をする 「あき、もしかしたらだけど… 優太はあきにあんなことしたのは 俺のせいかもしれないんだ… あいつとはこの事務所の入ったのが 同じ時期だったんだよね はじめの出だしは優太の方が好調だったけど いつからかなぜか逆になってしまって… あいつは俺のこと、良くは思ってない。 だから、俺から相手役のあきのこと 奪いたかったのかもしれないんだ… 俺が上手くあいつと関係作れてたら、 あきのこと 巻き込まなかったかもしれないのに…」 「翔さん…それは違います! 昨日、声楽のレッスンしてたとき 山岡さんが入って来たんです。 その後、修平先生が言ってました。 あいつは才能はあるのに 人のせいばっかりにして 自分の努力が足りないことに気づいてないって。 それを翔さんのせいにしてるって…」 「うん…どうだろ… でも、あきが優太にキスされなくて安心した。 俺、前にあきに俺の秘密言ったよね? 30にもなって恋人がいたことないって 笑笑 でも確かに役ではふりも含めて 何度もキスはしてる… でもそれは、役の中のキスで 俺にとってのファーストキスは まだだと思ってるよ?  だから、あきが役でキスをしてもそれは 役の上でのこと。本当のファーストキスは 大切な人とするキスだと思うよ。 だから心配しなくて大丈夫。 あと、俺が仕事でいない時は なるべく1人にならないで? 守れないから…」 「はい。翔さん… 僕の役としてのはじめてのキス… 翔さんがいいな…」 なんなんだ 泣いたかとおもったら 急にかわいい事を言うし… あきとならキス したい… こんな気持ちってあっただろうか 自分の感情がわからなくなる 「あき…そうなるといいな!」 目を合わせて微笑見かけると くしゃっとした笑顔をかえしてくれた 「あき、家まで送らせて?」 「でも…翔さん明日も早いんじゃ?」 「俺が送りたいだけだから」 あきを立たせると手を引いた 車にあきを乗せると 2人だけの空間になって安心する 「翔さん、この香りって 翔さん広告の香水ですか? すっごく落ち着く香りでずっと いいなって思ってました」 「そう? 嬉しいなぁ この香水のブランドがね 俺をイメージしたもににしたいって 俺の意見を取り入れて作ってくれたんだ。」 信号で止まると 鞄からアトマイザーを出す 「これ、携帯用に入れ替えてるやつ。 あきにあげるね。」 「いいんですかぁ? わぁー嬉しい!!同じ香りだぁ 翔さんの香り♪」 子どものような顔を向ける こに笑顔を独り占めしたいと 思ってしまうくらい 俺はあきに夢中だった マンションの下に到着する 「翔さん、ありがとうございました! あの…翔さん…」 「わかってるよ 家に着いたら連絡ね?」 「はい!」 「明日は撮影お昼までだから 終わったら事務所顔だすね。 修平さんには俺が連絡しとくから もしよかったら、あきの歌声聞かせて?」 「はい!では明日 よろしくお願いします」 なんか今日も色々とあったけど 最後にあきの笑顔が見れたら 心は満たされていった

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