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第11話

【side 彰】 はじめてのレッスンは ちょっと不安もあったけど 翔さんからメッセージも貰ってルンルンだった 発声の先生はずっと 「いいよ、いい感じ はじめてとは思えないなぁ!」 と本当にいいのか何なのかはわからなかったけど とても乗せてくれる先生で 気持ちよくレッスンを終えた その様子をじーっと見ている人がいた 翔さんみたいに背が高くてスタイルがいいわけではない オーラも…あるようなそうでもないような… ふと見上げると目が合う 僕のことを知ってるかのように大きく手を振ると 部屋に入ってきた 「俺、山岡優太。ねえねえ君は?新人さん?」 先生がすかさず 「優太、ちょっといきなり何?」 と言うのも聞かず続ける 「ねぇ、かわいい顔してんじゃん 笑笑  名前は? 何才?」 街や大学でたまに見かけるナンパ見たいで この人は苦手だなと思った… けど、きっとここの先輩だから 答えなきゃ… 「あの…谷口翔と言います。22歳です。 今日からここでお世話になります。 よろしくお願いします。」 「えー?2歳下だけ?高校生かと思ったわぁ 色白ー。童顔って言われない? ほっぺぷにぷにしてかわいい」 と僕のほっぺを触ってくる 翔さん以外に触られたくない…ふと 頭に翔さんがよぎった 「優太、いいかげにしとけよ! 彰は次の翔の主演ドラマの相手役に抜擢された子だ。 邪魔をするならさっさと現場行けよ」 先生からお助けの言葉 「え、そんなかわいい顔しちゃってぇ〜 あきらくんゲイ? ウケ? だって次ってBLなんでしょ? 俺どっちもいけるから翔さんなんかやめて 俺にしない?あの人真面目すぎてつまんないよ?」 初対面なのに 翔さんのことを『翔さんなんか』とか言って すっごく腹が立つ 「おい! お前いい加減にしろよ! だったら自分が主演に選ばれるように努力してこい!」 先生にそう言われると 「はいはい。邪魔者は去りますよー。」 舌打ちをしながらも 僕にウインクをして手を振って出ていった 「悪い奴じゃぁないんだけど ちょっとひんまがっていっちゃててさ。 彰は気にしなくていいからね。 翔と同じ頃からここにいるのにどんどん差が開いていって 面白くないんだろ。演技がどうとかより 使ってもらえない原因をわかってないんだ。 自分で気づくしかないんだよね。 それよりさぁ、彰本当にいい声してるわ! 久しぶりに素質感じた!これからも頑張ろうな?」 「はい!よろしくお願いします。僕、頑張ります。」 先生は気をつかってくれたのかもしれないけど それでもすっごく嬉しかった。 身体が柔らかい方が動きがでて演技の幅が広がる… そう言われてはじめた昼からの柔軟を含めた運動は 普段あまり動いていなかった僕にはきつく… 早く慣れたいと事務所にあるトレーニングジムで そのあと自主トレしたのが間違いだったのか いたたたたっ 朝ベッドから起き上がることすら痛かった リビングに行くとそこには 僕を見ながら爆笑するお姉ちゃん 「あきらぁー ははははは あんたロボットよりぎこちないよ 笑笑」 「もぉ! わかってるって… これでも頑張ったんだもん」 何を言っても笑う転げるお姉ちゃんだった でもいいんだぁ〜♪ だって今日は頑張ったら 午後から社長さんが翔さんの撮影現場に 連れていって下さる よし、今日も一日頑張る! 発声からはじめて 先生にピアノの合わせて声をのせる 子どもの頃から歌を歌ったりピアノを弾いたり バイオリンを弾いたりする時間が大好きだったから 僕にとって、この時間は幸せ♪ 「よし! 10分休憩」 先生が声をかけてくださって お水を飲もうと後ろを向くと そこには社長さんとディーンさんが ニコニコ笑いながら立っていらっしゃった 「彰、いい! お前の歌声最高だ!  ビジュアルだけじゃなくって 歌は間違いなくお前の強みだよ!」 と社長さん 僕はビジュアルになんてなんの自信もない それどころかいつまでも 高校生に間違えられる童顔を気にしているのに… でも歌は歌って見たかった 「早速だが、主題歌は 彰がメインで、翔とハモる感じでどうだろうか?」 と先生とディーンさんにたずねだす 「いけると思う! 昨日初めて声を聞いた時、この子は 逸材だと感じたんだ。 翔の歌声もいいけど、彰をベースに 翔が寄り添う感じで歌えば歌に深みがでる 歌のヒットも間違いないな」 と先生 「修平さん、一緒にドラマの世界観を 曲にしたい。作詞は私に任せて作曲してくれないか?」 ディーンさんが先生を修平さん と呼んだことで、聞きそびれた名前を知った 修平先生がヒット曲を何曲も出している 先生だなんて知らなかった なんだか慌しく主題歌の話が決まり その話をお土産にみんなで翔さんの現場に向かう 現場ではシリアスな別れのシーンの撮影が行われていた 別れを決めた翔さんに対し 何度も謝りながら涙を流して復縁を求める女性 翔さんの表情も相手の女優さんも とてもリアリティーがあって… あまりの迫力に本当にドラマなのか と疑問に感じるくらい そして同時に自分はこんな演技ができるのか ち不安に苛まれた 監督のカットの合図と共に昼休憩に入る 翔さんは相手役の女優さんに挨拶をすると さっきまでの表情は嘘のように いつもの柔らかい優しい笑顔で手をふりながら こっちに早足できてくれる 「あき、いらっしゃい。待ってたよ。 ここに来れたってことはレッスン順調?」 とまた優しく頭をポンポンしてくれる 社長さんやディーンさんよりも先に 僕にとこに来てくれた翔さん それがすっごく嬉しくて嬉しくて 昨日の嫌な人のことはすっかり忘れるほどだった でも…社会人としてはいいのかな? って心配したけど… 「翔、おつかれ〜 相変わらず一発オッケー連発だな! 彰ならすっごく頑張ってるよ。 さぁ、お弁当の差し入れ持ってきたから 食べながら話そっか」 とご機嫌な社長さん テラスのようなところに移動して 4人で昼食をいただく 「翔、修平さんがさぁ 彰は稀に見る逸材だって! 俺もディーンさんもさっき声楽のレッスン 覗いてきたけどさ、彰、歌の素質完璧だわ」 「あき、すごいじゃん! 修平さん厳しいんがよ? まだ2日目でそんなに褒めて下さるなんて。」 修平先生や社長さんたちに褒められた時は 純粋に嬉しい!頑張る! って気持ちだったのに 翔さんに褒めてもらうと 顔が熱くなって 自分でも鏡を見なくても真っ赤なのが わかるくらいだ 「なんだ? 彰 俺の時は普通に嬉しそうだったのに 翔の褒められた真っ赤 笑笑 翔、それでディーンさん作詞 修平さん作曲でドラマの世界観を主題歌に してくれることになったんだよ! それでせっかくだし彰の声をベースに お前がハモる感じで考えてる。どうだ? 早速だけどもう取り掛かってくれるから 彰の相手役決定のお披露目の日に歌も 出来たらお披露目したい!」 「もちろん!急ですけど 笑笑 あきの歌声聞きたいなぁ〜 俺、どっちかっていうと歌は 笑笑  だから俺こそレッスン頑張らなきゃな! あき、一緒にレッスンしてくれる?」 僕の顔はますます真っ赤だ 「…翔さん… そんな… 僕… こっちこそ教えてください」 「ん? 一緒に頑張ろうな♪」 翔さんの笑顔にキュンとした はじめて感じる感覚で… そのあと何を話したか ランチに何食べたかすたよく覚えていない 「あのぉ…翔さん…これ いやじゃなかったら食べてください… この前ランチについてたマカロン 好きって言ってたから…」 持ってきた袋を渡すと その場で箱を取り出して開ける翔さん 「あき?これ… もしかして…手作りだったりする?」 大きな声で言う翔さんに驚く 「あっ…ごめんなさい! 嫌ですよね 食べなくていいです。ごめんなさい!」 箱を返してもらおうと手を伸ばす 「えー?なんでそうなんの? あきが作ってくれたの?」 「…はぃ…」 「嬉しいに決まってるじゃん! 俺のために作ってくれたんでしょ? もったいなくて食べたくないけど食べるよ! ありがとう」 そう言うと マカロンを口にする翔さん 「えっ めっちゃ美味しい! しかも甘すぎず最高!  俺が抹茶好きとか言った?」 「いえ、翔さんこの前 抹茶オレ飲んでたから好きかなーって」 すると 「おーーーーい! お2人さん、俺たちもいるんですけど 笑笑 まぁ仲の良いのはいいことだ」 さぁ、彰の手作り食べて さぞ昼から撮影に精を出すんだろうな 俺らにもよこせ などと社長にからかわれた翔さんだったけど そこはさすがプロだった 一瞬にして世界観を作りだし 見ている者を惹き込んでいく 撮影の基礎知識を教えて貰ったり 用語を教えて貰ったり メモをするのにも必死だった まだ続きそうな現場に別れを告げて 事務所に戻る 明日からは演技指導も受ける やる事は山積みだけど 新しいことみ楽しみもいっぱいだ 歌ったりしているうちに 筋肉痛はすっかり治まりつつあったけど 今日も少しは身体を動かしたいと思って 自主トレをすることにした 「彰、筋肉はつけないでね イメージ変わっちゃうし 今のままがベスト!柔軟だけでいいから」 理由はわからないけど ディーンさんがそう言うならと 柔軟を中心に身体を動かすことにした

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