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第10話

【side 翔】 今日から3日間は今撮影中の恋愛映画の収録で 現場に缶詰め状態だ あきは今日から色々と トレーニングを始めていくことになっている はじめては不安なはずなのに 早速そばに居られない… せめてメッセージを送ろうかと悩んだけど とりあえず撮影前に電話をすることにした プルルル プル… すぐに聞きたかった声がする 「翔さん?」 「あき、おはよう! 元気そうだね。昨日はちゃんと眠れた?」 「おはようございます! はい!あの後すぐに 笑笑 でも、今日は張り切りすぎて5時に目が ばーっちり覚めましたぁ」 「笑笑 そっかぁ 初日だし、ちょっと心配したけど 元気そうで安心したよ。 本当は側に居たかったけどごめんね。」 「えー 嬉しすぎます! 翔さんの気持ちだけで頑張れちゃう 笑笑 翔さん? 翔さんもお仕事頑張ってください♪」 「うん!お互い頑張ろうな。 いま、マネージャそっち向かってるから もうすぐ着くと思うよ。 じゃぁ、また連絡する!」 「はぁい。ではまたぁ」 あきは思った以上に元気で 新しい事にわくわくする小学生のようで ちょっと安心した よし 俺も気合をいれて頑張ろう 撮影は順調に進んでいった そう 夕方までは 「カーット! お疲れさん よかったよ。じゃぁ30分休憩ね。」 と休みの合図がかかる 楽屋に戻ると同じ事務所の後輩で 今回も少し出演している山岡優太が ノックをして入ってきた。 「翔さん、お疲れ様です! 次のシーンから入らせてもらいます。 よろしくお願いします」 「うん、おつかれ~。 よろしくね。」 優太とは同じ事務所ということもあり 共演することもそれなりにある かわいい後輩か?と聞かれると… きっと俺のこと よく思ってないんだろうな というのが向こうから伝わってきて 正直苦手な子ではあった 「翔さん、翔さん 俺、今日事務所でめーちゃ可愛い子に会いました! 誰かわかります?」 「いや? 今日事務所、顔出してないけど…」 嫌な予感がする 「なんだぁ。そっかぁ! 今日はじめてレッスンに来たっていうから 俺にはたーっぷり時間があったんで お手本になってあげちゃいましたよー。 一生懸命発声練習とかもしてて。 いやぁ、かわいかったなぁ。 俺、ねらっちゃおっかな。」 「どんな子なの?」 まさかと思いながら聞いてみた 「またまたぁー 次の翔さんの相手役のあきらくんですよ わかってるくせに!それとも 翔さん忙しいから、今日からって知らなかったとか?」 「あぁ、あきのことね。」 「はい! 翔さんって、恋愛対象女だけですよね? それともスキャンダル禁止だから恋愛しないとか? 俺、どっちもいけちゃうんですよね~ あきらくん、その辺の女優よりずーっと かわいいじゃないですかぁ 明日から俺もレッスンいっちゃおっかな~ いいですか?」 イラっとする自分に気づく 「あのさぁ、あきは今日からはじめて この世界に入ったとこなんだよね。 あいつの邪魔はしないでおいてくれない? レッスンは専門家にまかせて 優太は自分の仕事に集中すれば?」 「何そんなにイラついてるんです? あきらくんは、翔さんのものじゃないでしょ?」 「別にいらついてないけど! もうすぐ次のシーンはじまるから 準備したいし、出て行ってくれる?」 「わかりましたよー かわいい後輩が挨拶に来たのに 冷たいですねー」 何も言わずに優太が出ていくのを待った その後のシーンは不覚にも 何度も撮り直しを出してしまった 少し休憩をもらう すかさず優太が近づいてきて 耳元でボソッと言う 「翔さん、動揺してるんですか?」 「はぁっ? 何に?」 「俺が、あきらくん狙う っていったから、とか?」 「そんなわけ」 「ないって言えます? 翔さん、テイク増やすなんて珍しいなぁ 笑笑」 俺は何にイラついてるんだ 優太の態度にか? いや、そんなのは今に始まったことじゃない じゃぁ… あきを狙っていいかと言われたこと? 俺の心はどろっとした感情に包まれていった 気持ちを切り替えようと コーヒーを一口飲む スマホを取り出すとメッセージと 動くスタンプが 『今、レッスン終わりましたぁ♪ はじめてなのによく頑張ったって 先生が褒めてくださいました! 翔さんに恥じない役者になれるように 少しずつ頑張ります! 明日は午前中頑張れたら 社長さんと昼から撮影現場 見に行けるかもです♪ 翔さん、まだ撮影中ですかぁ? お邪魔しちゃってたらゴメンナサイ…』 白いクマが画面の中で かわいく手をふっている あきみたいでかわいかった 一気に俺の気持ちは明るくなった 『あき、おつかれ! 今、ちょっと休憩中 はじめてのレッスン疲れたでしょ? ゆっくり休んでね 明日あえるの願ってる』 そうへんしんすると 現場に戻った そこからはいつものペースを取り戻し 着々とシーンをこなしていった 我ながらわかりやすいのかもしれない 後輩の言葉に一喜一憂する自分が ひどく情けなく感じた一日だった

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