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 階段を上らされてさすがに帰りたくなる。 「はぁー?くーちゃん、何?」  腕を引かれるまま歩かされて目も覚めた。 「何じゃない。科会あるの忘れてたからお前はその間ここで……」 「科会?何それ?」 「英語科会。英語科の打ち合わせ!」  言いながら図書室のドアをガラガラと開ける。 「あ、!」  先に中に入った工藤の言葉を聞いて嫌な予感しかしない。  カウンターにさえ人の居ない図書室の机に座っていて顔を上げたのは相変わらず教科書とノートを開いているあいつ。 「くーちゃん!?」 「俺、今から打ち合わせあるの忘れてたから?」  俺の制止も虚しく工藤は宮部に向かって手を合わせた。 「え……」  固まったあいつ、というかまともに顔を見たのが初めてだが、分厚いメガネの向こうで目が見開いている。 「プリントやらせるだけでいいから。こいつ、目離すとすぐ帰ろうとするし、ここに留めておくだけでもいいから……な!」  誰も「いい」とも「やる」とも言っていないのに、工藤は「頼むな!」と宮部の横にプリントを何枚か置いた。 「ほら!村瀬、宮部に迷惑かけるなよ!科会終わったらすぐ戻ってくるから!いいな、逃げるなよ!」  俺の目の前に指を突き付けて念押しされてもやる訳がない。だが、 「逃げたら留年だぞ!」  とっておきの呪文のように言って出て行く後ろ姿を見て俺は唸ることしかできなかった。

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