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15、第3話「ファミレス」

 まっすぐ帰る気にもならずに学校を出てフラフラと歩く。  バスに乗ればすぐに家だが、金曜日の夜にそのまま帰るなんて何かもったいない気がした。  とはいえ……スマホを出してメッセージアプリを開くが凛華も今日はバイトだし、他の女の子たちも塾だの、彼氏とデートだの……俺が補充で無理だと工藤に広められたためにみんな予定はもう別にあって、いざ冷静に見てみると誰も構ってくれなさそうで悲しい。 「……帰ろっかなぁ」  寂しくなってきて呟いた俺は暗くなった空を見上げて孤独に打ちひしがれていたが、目に入ってきた看板を見て足を止めた。  店の中を窺ってみてニヤリと笑う。  窓際に居た女の子の集団と目が合って笑われたが、笑って手を振っておくと彼女たちも笑って手を振り返してくれた。  迷わず店に入って「あ、知り合い居るんでっ!」と近づいてきた店員に断って奥に進む。 「やほっ!マジでここでも勉強してんじゃん!」  声を掛けると、宮部は跳び上がってシャーペンを落とした。 「えーぇ。ひっどくね?」  拾ってそのペンを差し出すと、宮部はそろりと手を伸ばす。  あまりにもオドオドしたその反応が面白くてペンごとキュッとその手を握ってやると、宮部はまた派手にペンを飛ばした。 「コントかよ」  笑って向かいの席に座りながら今度はテーブルにペンを転がす。 「ご、ごめん」 「えー?」 「あり、ありがとう」  落ち着きなくメガネをしっかり上げる姿をテーブルに頬杖を付いて眺めた。

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