20 / 73
20、第4話「まさか」
土曜は凛華の誘いに乗ってボーリングに出かけた。
女三人に男三人。
適当にペアを作ってとにかく騒ぐ。
「琉生、下手じゃーんっ!!これ、勝てるんじゃない!?」
投球直後の球がガーターに落ちて戯けると、凛華がペアの男の腕を掴んでピョンっと跳ねた。
「二投目見てから言えよっ!」
球を持ってニヤリと笑うとフッと短く息を吐いて足を踏み出す。
右に少し曲がった球は曲線を描いてヘッドピンと次のピンの間のポケットに綺麗にハマった。
ガコンッと音をたてて倒れたピンを見てペアになっていた女の子、美空 が両手を挙げて飛び跳ねる。
その両手にパチンと合わせると抱きついてきたその小さな体をキュッと抱き締めた。
「カッコいーっ!」
「惚れるなよー?」
「わかってるよー!美空、好きな人居るしー!」
隣同士で座りながら渡されるペットボトルに口を付ける。
いつもやるやり取り。
なのにフと寂しい気がしたのは何故か。
「琉生ー?」
指を絡められてそれを握り返しながら笑顔で会話に加わっていた俺は「村瀬くんは結局僕と同じ一人なんだ?」そう言った宮部のあの目を思い出して言葉を飲み込む。
パッと顔を上げると、「まだ帰れない」と言ったあの声が耳に蘇って立ち上がった。
「どうしたのー?」
顔を覗き込まれて微笑んでも頭に浮かぶのは宮部の寂しそうな顔ばかり。
盛り上げようとテンションを上げるものの、気分はどんどん沈んで虚しくなるばかりだった。
ともだちにシェアしよう!