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「ファミレスで飯食ってるけど?」  片耳を押さえてスマホを少し離すと、通話の音量を下げる。 『家に快生(かい)一人じゃない!』 「はぁ?快生だってもう中二だろ。一人で何が……」 『早く帰って来い!この無責任野郎がっ!!』  一方的に切れたスマホをテーブルに投げると、宮部は心配そうにこっちを見た。  それを気にしないで肉をナイフで切って口に運ぶと宮部はまた落ち着きなく視線を彷徨わせる。 「あ、あの、帰った方が」 「は?一番下にだけクソ甘いブラコンの姉ちゃんなんてほっとけ!」  スマホを睨むと宮部はそっと俺のスマホに触れて丁寧にこっちを向けて俺の側に置いた。 「それでも兄弟でしょう?家族が……「帰って来い」なんて羨ましいよ」  微笑んでいるのに悲しそうなその顔から目が離せない。 「宮部は?」 「ん?」 「お前は帰らねぇの?」  聞いてたか?と聞きたくなるくらい何の反応もないままで、やっと動くとずっと放置されていたシャーペンを手に取って宮部はコーラで少し染みになったノートに目をやる。 「おい」  耐えきれずに聞くと、宮部はスマホのディスプレイを点けてすぐにまた消した。 「……」  消え入るような声なのに俺の耳にこびり付く。  物悲しいその声が水に垂らした滴のように暗い水面に輪を描き続けぼんやりと広がっていった。

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