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「……要は人を好きになったことがないってこと?」
またコクリと少し喉を潤して宮部がやっと口を開く。
「それもあるけど……一度しかない青春、思いっきり楽しみてぇじゃん?」
俺もグラスを持ち上げてジュースを飲むと、宮部はじっとこっちを見ていた。
「何?」
「それって楽しいの?」
「は?」
「騒いでその場は楽しいかもしれないけど……寂しくない?」
言われて今度は俺が黙り込む。
「村瀬くんは結局僕と同じで一人なんだ?」
その目がとてつもなく寂しそうに見えて咄嗟に手を握った。
ビクッと跳ねた宮部の手が遂にグラスを弾いてしまってコーラは零れ、グラスはテーブルから落ちて音をたてる。
駆けつけた店員が拭いてくれている間も宮部は両手を握り締めて縮こまっていた。
「あれ……俺の方が嫌われて……る?」
呟くと、パッと顔を上げた宮部と目が合う。
フルフルと首を横に振る姿はかなり必死で、でも、なぜか悲しそうに見えた。
「……」
そんなの明るく吹き飛ばしてやりたいのに言葉が出てこない。
注文した料理が運ばれてきてもうまく口の中で咀嚼できなかった。
沈黙は苦手なのに入れた肉を飲み込めなければ、話す話題も思いつかない。
とりあえず、残りのジュースで流し込むと、ドリンクを取りに立ち上がろうとした俺のスマホが着信音を響かせた。
『琉生っ!もうどこ行ってるのよ!』
通話を押した瞬間に耳をつんざく声。
俺の六つ離れた姉、静華 はいつも容赦がない。
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