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「何ソレ……」
意味がわからなくてそれ以上の言葉が出ない。
「最初は「高校?行く気なの?」って言われたんだ」
ギュッとリュックを前抱きにして握り締める宮部。
「でも、さすがに高校は行かせて欲しくて頼んだんだ。一番近いこの高校でいいからって。……だから、この高校の三年間は僕の猶予期間」
「意味わかんねぇよ」
自分でもびっくりするくらい絞り出した声は低かった。
俺なんて「高校くらい行きなさい!バカなの!?」って姉ちゃんに殴られて母さんと姉ちゃんが何とか俺でも行ける高校を探したのに、こいつは……。
「……お前の母さんって若そうだな?」
「え?」
「いくつ?」
「…………三十一」
ためらってそっと送り出された数字。
「えーっと、俺らが十六で三十一ってことは……あ?」
声に出して指を使ってみるがこんがらがると、
「お母さんは十五歳で僕を産んでる。僕を産んだからお母さんは高校に行ってないんだ。だから、なかなか許してもらえなかったんだよ」
宮部はなぜか微笑んだ。
声はいつも通りなのに目も合わないし、泣いているようにも見えて思わず手を伸ばす。
だが、その手は届かず空をきった。
「想像もつかないよね。この歳で子供を抱えているなんて。自分は行けなかったのにその機会を奪った子供が高校行きたがるなんて……そりゃ、怒るよね」
俺はボスッとそのリュックに拳を当てて俯く。
「……そんなことねぇよ」
気の利いた言葉なんて見つけられなかった。
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