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ずっと沈黙のままで意味のわからない焦りだけを感じていると、鐘が鳴って俺と宮部は壁に掛かっている時計を見上げた。
「最終下校時刻だね。帰らなきゃ」
とっさにリュックを背にやった宮部の左手を掴むと、宮部はびっくりしたようにこっちを見る。
「飯はうちに来い」
それだけは何とか言うと宮部はゆっくり首を横に振った。
「そんな迷惑……」
「家庭教師料みたいなもんだ!」
「え……しかも、今日何も勉強してないし」
きょとんというか……何言ってるんだ?そんな顔。
「どーせまたファミレスだろ?」
「いや、今日は帰……」
言いながら宮部はポケットからスマホを取り出したが、すぐに深いため息を吐いた。
「……何て?」
スマホに何らかのメッセージが届いたと踏んで聞くと宮部はチラッとこっちを見てから目を逸らす。
「へーぇっ!外で食ってこいって感じかー?」
「待っ!!」
その反応が何かイラっとしてサッとスマホを取ってやると、宮部は慌てて手を伸ばした。
そんなの軽く避けてそのメッセージを見てやる。
『シュンちゃん寝てるから帰んないで』
そこにはたったそれだけの文字のみが並んでいた。
いや、その前だって……
『消えてて』
『二、三日帰らないで』
『邪魔』
目を疑うメッセージばかりだ。
「お前……これ……」
振り返ると、宮部は俺の手からスマホを取って走り出す。
あいつ……。
そんなの放っておけなくて、俺も急いでその後を追った。
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