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第4話

 他のカップルにその気持ちが伝わるかは分からないし、他のカップルの営みがどんなもんかなんて知らないから、それが俺たち二人の在り方だと思ってきた。   亮ちゃんが意を決したようにごくりと唾を飲み込む音がする。  こっちまで緊張してくる。 「押、し倒されて、両足を上に抱えられて…お尻の中を舌でたくさん解されて…」 聞きながらその通りにする。  荒々しくズボンに手をかけ下着も少し破けてしまったようだけど知らない。  亮ちゃんの蕾からはボディソープの香りがしたけれど、中はいつもより解れていて、数時間前の情事をリアルに感じさせられ腹がたった。  俺の亮ちゃんで、亮ちゃんあってこその俺だったのに。    いつも優しくしてきた自分の中にこんな荒々しい所があるのも知られたくなかった。亮ちゃんはいつものように声を堪えようとしてるけど、舌で敏感な中を弄られて息があがっていってる。  それでも、弟のように思ってる崇を嫌いになれない自分もいる。 「それから?」 「多分足持上げられたまま上から突かれて……あぁっ!しゅん!最初から深ぃ……」 「だってそうされたんだろ。同じにするから忘れてよ。俺の感覚だけを覚えててよ」  夜通し泣いてたんだろう、また涙声でひぃひぃ呼吸が整わなくなってきた亮ちゃんが可哀想な気もしてきたけれど、あいつにされた事を忘れさせるには、一層酷くしなきゃと思った。多分、亮ちゃんもそれを望んでる。 「上から突かれて後は」 「後はよく…覚えてないんだけど…キスされた時に俊じゃないって気づけて…」 ふぅん。その時やっと気づいたんだ。  そんなに深酒するなんて。崇が自分に好意を持ってることくらい分かってただろうに。そんな相手と二人きりで俺と崇の区別もつかなくなるまで呑むなんて。  危機感なさすぎだよ亮ちゃん。俺も呼べば良かったじゃん。  酒は苦手だけど最近は前よりも呑めるようになったの知ってるはずなのに。別に呑まなくてもボディガードで連れてけばいいじゃないか。  疚しい気持ちがあったんじゃないの?なんて思ってもいない事考えるくらいには腹たってるからね。  亮ちゃんの部屋には、最初の頃に少しずつ穴を拡げる為に使ってた道具があるはず。  道具の名前なんて知らないよ、亮ちゃんが買っておいて夜な夜な俺と繋がる為に頑張ってくれてたなんて後から訊いたんだから。  そんな道具をこんな風に使うことになるなんて、当時は考えもしなかった。  少し濡らしただけで自分のモノが入ってる場所に捩じ込んでく。 「ヒぃっっ。なに、なに、痛いよ、」  「痛くても覚えといて。亮ちゃんが迂闊だったんだよ」 奥まで突っ込んでから律動を始めると、痛いっ、痛いっ、って言いながら入れた場所から赤い血が細く流れてきたけど、中もその分痙攣、収縮を繰り返してる。  血で滑りの良くなった道具も律動とは別に抜き差しすると一層叫んでるような声と痙攣が止まらない。 「しゅんっ!ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんっ…」 喘ぎながらも一生懸命謝る姿は、いつもの意地っ張りな部分は掻き捨てて謝らなくちゃって気持ちが伝わってきた。  と、同時に、聞きたいのはそんな言葉じゃない事に気づいた。 「もういいからさ。ごめんより愛してるって言ってほしいな」 泣いてぐちゃぐちゃの重い瞼を上げてこっちを見た顔が、キョトンとしてて笑ってしまった。  道具は抜いて、向き合って膝に乗せて抱き寄せる。 「亮ちゃん。これからもずっと一緒に歩いていこう。崇の事は、一回あいつを殴っておしまいにする。もうこの件は口にしない。だから、俺に集中して」 「しゅん…好きだよ、好き。愛しい俊。ずっと、ずっとこれからも愛、してるよ」 恥ずかしそうに言った亮ちゃんはぐちゃぐちゃの泣いた顔でも最高に可愛いと思った。  これからもたまには素直に言ってほしいな。  行為の後、崇を呼び出した。こいつも同様に寝てなかったみたいだ。  俺の顔を見るなり、「俊さんすみませんでした!」って深々とおじぎしたままこちらを見ない。  亮ちゃんに言った通り、肩を軽く一発殴って終わり。 「もう、手出すなよ。今度は一緒に呑む時は俺も誘えよ」 こっちの真意が分かったのかごめんなさいと小さく言った後にいつもの崇に戻った。 「俊さん、最近少しはお酒強くなりましたもんね。今度飲みくらべしましょうか」 「それは無理」  体格はデカイのに怯えた兎みたいな可愛い瞳の弟分も嫌えない。  誰だって魔が差す時はあると思う。お酒のせいで。次はそんな事させない、起こさせない。  これからの亮ちゃんは全部俺のだし、俺のこれからも亮ちゃんの。  後日。  あの後から亮二さんは少しだけ俊さんに素直に甘えられるようになったらしい。  バンドメンバーでの練習の時も、親友ってよりは恋人って雰囲気を醸し出してくるようになってしまったので、これはこれで……傷心の俺にちょっとは遠慮してくれないかな、なんて思ってる。        ~happy end~

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