13 / 23
第3話
朝方、亮ちゃんからメッセージが来た。
『話がある』
ゲームをして寝たばかりだったのにこのメッセージの通知音に気づけたのは虫の知らせ的な何かだったのかもしれない。
『どうしたの?』
『うち来られるなら来て。直接話したい』
いつもなら自分の部屋かのように入っていく恋人の部屋に、改まった話な気がしたからノックをして入っていった。
「亮ちゃん……」
こちらも寝たばかりで寝不足、寝癖そのままなコンディションの悪い状態だったけど、亮ちゃんはもっと、なんていうか悲壮感が漂っていた。
明らかに寝ていないだろう顔色の顔。
線の細い身体を小さく丸めた姿はより一層身体を小さく見せていた。
ベッド上で毛布にくるまっているから、一緒に毛布に入って話しかける。
「どうした?」
「……俊ごめん」
「ん?」
なかなか言いづらい事なんだろうなと無言で亮ちゃんの手を握って待った。
手の甲にポツンと衝撃があり、声を出さずに泣いてる涙が落ちてきたんだと気づいた。
近くにあったボックスティッシュを引きよせ、目尻に当てると紙はすぐに湿って色を変える。思ったよりも涙が止まらないようでこちらが切なくなった。
「ごめん俊。僕さ、酔っぱらってお前と間違えて崇に抱かれちゃったんだ…。酔っ払ったとか言い訳してごめん…」
何て返事をすればいいか咄嗟には出てこない。
「ごめん…許しては虫がよすぎる。別れたかったら別れてほしい。ごめん。俊はずっと僕に誠実な恋人だったのに」
だったとかいう過去形は聞きたくなかった。
「そんな簡単に別れるって言える関係?」
「違う!なんて言ったら許してもらえるか分からなくて…。別れたいなんて少しも思ってない!」
案外不器用で、臆病な所がある亮ちゃん。
こんな時は潔く男らしく言い訳したくなくて言葉が少なくなってしまうの分かってる。
「思ってもいない別れるなんて言葉言わないでよ。……あはっ、今日やっと目があったね」
昔よりずっとなくなった頬を両側から潰してこっちを向かせた。
「酷い顔。俺が隣にいなくて歩いてられるの?俺はもうとっくに、隣に亮ちゃんがいないのは無理なんだよ」
むにょっとした唇のまま口を開く亮ちゃん、不細工になってるけど可愛い顔。
「僕だって…俊のいない日常なんて…」
「なら今回は水に流すから教えて、あいつにどんな風に抱かれたか。上書きするから」
「でも…でも…」
亮ちゃんの躊躇いは俺がすんなり流すって言ったことに寄るものなのか、いつも丁寧に抱く俺と違って荒々しく抱かれてしまった事による罪悪感からなのか。
俺だって欲望のままに亮ちゃんを抱いてみたい、乱れてほしいと思ったことは数えきれないほどある。
でも亮ちゃんは同い年の俺には意地を張って、対等であろうと、弱いところは見せまいと喘ぎ声だって噛み殺してしまう事も少なくないから。
なんで付き合ってるんだって思われてしまうかもしれないけれど、幼なじみからいつの間にか長い月日を過ごして親友と呼べるようになって、そこから恋人になった俺たちには素直になれないところもある。
元々が親友だったから。
同級生だったから。
たまにお酒で腑抜けになった亮ちゃんがいつもより甘えてくれる時はあるけれど、亮ちゃんの考えを尊重したくてゆっくり抱くようにしてきた。
ともだちにシェアしよう!