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第2話

 そんな時でした。ライブ終わりに呑もう亮二さんに誘われたのは。ドラムのメンバーも誘ったそうですが、断られたそうです。  二人きり。  お酒の弱い俊さんは今日は元々誘ってないそうです。ほんとに、僕は弟のような存在で、意識されてないんだと思いました。  それでも期待はしなかったと言ったら嘘になります。うっかり酔って少しだけでも甘えてくれたら…。間違いでもいいから肩に寄りかかってくれて送ってあげられる立場になれたら…。  でも、お酒に強いあなたのことですから、期待するだけ無駄だと何度も自分に言い聞かせました。  お互い深酒をし、珍しくあなたが足元が覚束なくなり寄りかかってきました。これだけでも十分だと思えました。肩をかして亮二さんの部屋まで付き添いました。ベッドに横にして、服を緩めてあげたら 「ありがとうね、俊」 俊さんと間違われました。  さっきまで一緒に呑んでたのは僕なのに。自分も大分酔っていたこともあって、愛しい人なのに分かってくれてない怒りが沸いてしまいました。間違われたのをいいことに触ってしまおう。  普段の控えめな僕はどこにいったのか。自分の黒い部分が出てきて、荒々しく上着を脱がせ、ボタンがちぎれる音がし、亮二さんの上半身が露になったらもう自分をとめられませんでした。  亮二さんといつもの通りに呼んだらバレてしまう。出来るだけ声は出さずに裸の上半身に手を、舌を這わせていきました。  亮二さんはうわ言のように「俊………俊…」と甘い呼び掛けを繰り返していたので、惨めなような、腹立たしいような気持ちで。  あなたに触っているのは僕なのに。  少し酷くしてやりたい。乳首を埋めるように舌先でなぶりながら押し込み、もう片方のニップルピアスも何度も何度も弾いてやりました。赤くなった乳首が果実のように熟れて膨れていきました。 「やっ…俊………いやぁ…」 メンバーの前で見せる姿とは違う、可愛くて甘ったるい声でその名前を呼び続ける姿に、触るだけと思ってた気持ちは微塵もなくなりました。  強引にズボンも下げ、両足を持ち上げ隠れてた蕾の中に唾液を塗りつけるように解していきました。恥ずかしい格好のあなたは緩んだ口元からずっと喘ぎ声をあげていました。そのまま足をあげた態勢で、つけるものもつけずに上から貫きました。 「や…あっ、あぁぁぁぁ…ふかいぃ…」 深いと言われようがこちらはもう勢いで動いてるので止まれません。最奥を狙って突き立て、ギリギリまで出しては入れ。 「やぁっ……俊、なんでぇ……ぐるじぃ…」  いつもは甘くて優しいエッチなんでしょうね。生理的な涙が光ってみえます。同じには抱きたくありませんので、このまま僕ので串刺しになってしまえばいいのにと思いながら、少し向きを変え更に深く深く挿いるようにしました。  噎せるような声と痙攣した太股をよく覚えています。そういえば唇にキスしてなかったな。ライブ時に薄い色の口紅をつけるとプルプルする厚めの唇。触れてみたかったそこに触れるため、正常位に戻し上から口づけると、 「えっ、俊?!」  あはっ、やっぱりキスはバレてしまうんですね。必死で両腕で押し退けようとされましたが、僕はあなたと出会った頃の力のない僕じゃないんで。腕は片手で頭上に結わえ、繋がったままで反撃する足なんて大したこと出来てないので、また深く挿入し直しラストに向かって動きます。 「なんっで、…やめろよ!」 やめろと言われてやめられますか。律動を早め、怒って締まりのよくなったアナルに絞り取られるように奥に出しました。 「なんで…なん…で…」 肩を奮わせて泣いてるあなたもキレイだなとぼんやり考え、正気になった所でとんでもない事をしでかしたという気持ちが溢れてきました。  勃起していたはずの亮二さんのそれは段々力を失っていって、反省してるはずなのにそんなとこを見ていた自分も滑稽でした。 「ごめんなさい、俊さんと間違われて…」 ズルい僕はここまでで言葉を濁します。 「僕が?俊と間違えた…?」 「はい…」 「そっか…そうだったんだ…ごめん、出てって」 「亮二さん、ごめんなさい…」 「うん。お前は悪くないよ」 弟扱いしてる僕に優しいあなたならそう言ってくれると思いました。 「ごめん、なさい。お休みなさい……」 「ん。お休み…」  項垂れたあなたは俊さんに話して謝るんでしょうか。多分、少しの話し合いの後、俊さんなら許してくれるんでしょうね。それとも僕とのセックスを思い出して黙っててくれるでしょうか。僕はどうしたいのか。一度抱いてしまったらもっとあなたが心に刻まれてしまった。自分がツラくなっただけだった。バカな行為だったと思います。  亮二さんの部屋を出て、あの人の感触を思いだしながら、自分の醜い心を嘆きました。 そんな中でも月だけは綺麗で。  明日自分は二人に会ったらどういう態度をとればいいのか。  この綺麗な月と相談しながら夜を明かそう…。ぼんやりとそう考えながら帰路につきました。

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