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α

αだからなんだ。成功が約束されている?  そんなのどうだっていい。 オレはオレだ。 α至上主義の奴らは、自分のバースに酔い。βを犬。Ωを穴とでも思っているのか・・・。 まるで自分が神かの様に彼らを扱う。 αはΩがいなければ産まれる事も出来ないのに。 αこそがΩを愛し慈しむべきなのに・・・。 親の決めた学校には行く気がしなかった。 それでも、なんとか高校だけは卒業してほしいと言われ、行った学校に、あいつはいた。 下世話な話題に、必死に取り入ろうとするやつら。そんな奴等から、逃げる様にたどり着いた所にそいつはいた。 ただ、静かに座って本を読んでいた。 図書室の窓際の席。 そんな中で、見つけた自分の居場所はそいつの壁一枚挟んだ外側。グラウンドからは丁度影になって、他からは見えなかった。 一度、風が気持ちよくてうたた寝をしてしまった時、イヤホンが外れて音が漏れていた事があった。その音で、誰かに見つかったんじゃ・・・と目が覚めた時不安になった。 周りを見渡し、頭上にあった窓から中を覗いた。 その時、目が合ったと思った。けれど、そいつはすぐ本へと視線を戻した。 自分とは違い、少し長めの前髪。まっすぐと本を読んでいた瞳は、物語が面白いのか何処かキラキラとしてた。 そいつが誰かに言うんじゃないか・・・とか、誰かに言ったらあいつを問い詰めて・・とか色々と自分に言い訳をしながら、あの場所で過ごしたが、そいつは、誰にも言わなかった。 昼休み、毎週水曜日の放課後。本を読む為だけにそこにいた。 静かにページをめくる音。 たまに、勉強をしているのかペンの走る音。 気になって図書室にそいつを見に行ったことがある。 親しくなりたい訳ではなかったが、いつも何を読んでいたのか・・・・気になった。 ただそれだけ・・・。けれど、その日そいつは本を読まずに、寝ていた。 起こさない様に、隣に座る。  日に当たってないか、肌は白く。赤ちゃんの様な唇。閉じられた目蓋は、睫毛で影ができていた。後にも先にそいつの顔をちゃんと見たのはその時だけだった。 ・・・なんか、柔らかそうだな・・・・。 おもわず、手が伸びる。そのタイミングで、そいつが身じろいだ。びっくりして、手を引っ込める。窓の外で鳥が飛んだ影が、差す。ふと外を見上げると、自分が見ていた空がそこに広がった。 それから、卒業まで・・・オレはその場所に行く為に学校に来ていた。 そんなβのクラスメイトが・・・、何でこのリストに名前が載っているんだ? Ωが国の斡旋でαを充てがわれる様に、αも高校卒業を機に適齢期Ωのリストが送られてくる様になる。特に、中流から下流のαはこのリストから相手のΩを見つける事が多い。 オレのところにも何回か送られてきたが、無視し続けたらついに職場にまで届く様になってしまった。  「高雅! お前宛に、Ωリスト届いてんぞ!!」 「はぁ? 雅!! んなもん、捨てとけ!!」 「いや、お前これ返送しないと罰金のやつじゃん! あと、叔父さんのこと呼び捨てにすんなって。」 「ぁあ?? 今更だろ? ってか、罰金だ?そんなんあるのかよ!」 「何、ホントに一回も見た事ないわけ?」 そう言って、高雅の叔父、雅が持って来た封筒を開けて手渡す。 『第30X回 マッチングΩリスト 』 この度、貴方様とブリーディングする準備のできているオメガのリストを送付いたします。 上位五名まで選んで頂き、下記政府機関へご返送ください。 返送頂き次第、お選び頂いたオメガのフェロモンサンプルもしくは、DNAマッチング結果を送付いたします。 なお、リスト返信が一度も無い方宛に、こちらの払込用紙を送付させていただいております。 また、こちらの支払いがなされない場合は、個人番号より資産の差し押さえをさせて戴きます。 リスト返信時に、払込領収を同封いただければご返金させて戴きます。 「っって! 何だこれ!? 新手の詐欺かよ?!!!」 「これ、返信しないでいると金額がどんどん上がるんだぜ。」 「マジ? 今ですら、ゼロが6個あるんだけど・・・?」 「まぁ、国の斡旋が嫌だったら民間でって事なんだろうけどさ〜。民間のでも入会金やらブリーディング費用やらで1000万とかするぜ?」 「はぁ? 何だそれ・・・。 そこまでして、相手見つけろってか?」 送られてきたリストはA4用紙に10人分の顔写真にプロフィール。性交渉の有無に、家族構成。 一枚、二枚とめくっていって、気分が悪くなる。 まるで、カタログで品物でも選んでる気分だ。 それでも、もう一枚・・・ 見覚えのある顔に手が止まった。 後『宮嶋 尊 (みやじま みこと) 』男 20歳 親(β✖️β) 血液型 O + 性交渉:なし  アレルギー:なし 特記事項:両親共に他界 ・・・こいつが何で・・・? リストを覗き込んできた叔父に一瞬、ドッキとして思わずリストを隠すが、目敏くリストを取られる。 「何? 気にいった子でもいた? って、この子、後天か〜。 後天はやめておいた方が良いぞ〜。」 「・・・何でだ?」 「あー、後天ってさ〜。覚醒まで、自分はベーターだと思って生きてきてるからさ〜、いざ子作りってなった時に、面倒なんだよ。まぁ、それがいいってのもいるけど。それに、先天とは違って筋肉もゴツいし。 濡れも悪いとかも聞くけどな。 まぁ、その子がどうかはわからんが、結局は旬過ぎまで売れ残って、代理出産とかしてたりするんだよなぁ。」 「・・・代理出産?」 「ああ、男でもΩは妊娠できるし、人工授精でもΩなら100%αが産まれるからな。セックスはしたくねーけど、子供が欲しいα様には重宝されてるみたいだぜ?」 「そ、そんな事して大丈夫なのか?」 「いや、代理出産するΩは大概短命だよ。だから、この制度が保てる訳。」 「・・・・クソだな。」 「仕方ないんじゃ無いか? Ω養ってんのオレらの税金だし。お前も、さっさと番作ればこんなリスト送り付けられてこなくなるぞ。 二人目以降は、民間じゃなきゃ手に入らねーし」 「・・・」 「はぁ・・・。高雅、お前んとこの事情知ってるから、あんま言いたく無いしお前の気持ちは分かるけどよ。 親父さん会社継ぐでも、どっちでも・・・そろそろ、恋人の一人や二人作ってもいいんじゃ無いか? 叔父さんはちょっと心配だぞ〜?」 「別に、不自由はしてない。」 「そりゃ、高雅は俺に似てイケメンだからな。 チ○コが乾く暇なんて俺もおまえ位の時には無かったわ。 けどな・・・、所詮俺らαは、βの女だろうが、αの女だろうが・・・。 運命のΩとやるセックスが一番なんだよ。」 叔父の薬指に、キラッと指輪が光る。叔父は、運命に味方されていた。だから、運命なんて言えるんだ。 けど、もし・・・ こいつがオレの運命のΩだったら・・・? βの男相手だったら不毛な気持ちも、Ωのアイツだったら・・・ って、オレは何考えてんだ? Ωだって、運命相手じゃなきゃαだって・・・捨てられるんだ。 「そうそう、高雅。 今日の接待は、Ω地区のバーだからID忘れんなよ?」 「・・・それ。オレも行く必要あるのか?」 「あるだろ。向こうの会社からの接待なんだから。まぁ、一回位遊んでみるのいいんじゃないか?」 そう言って、叔父は部屋をでって行った。 東堂は叔父から、取り返したリストに書かれている情報に目を通した。 βだと思っていた彼が、Ωになった理由はこのリストには書いてなかったが、このリストに載っていると言う事は、発情を迎え妊娠できる身体に・・・オレを受け入れられる身体になった証拠。その事に体が熱くなっていた。 これが、αの本能なのか・・・? 彼のフェロモンを嗅いでみたい。あの記憶の中の、柔らかそうな唇を味わってみたい・・・。そんな事ばかりを考えてしまう。 クソッ 「な、なんだ・・・!! 」喉が乾く・・・。 ズクン!!!! 「!!」 いつの間に? まさか・・・そんな。 「はぁ・・くっぁ・・・。」 βの女、αの女とセックスするより・・こんな紙切れで興奮するなんて・・・。

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