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寄り添う体温 1
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アパート更新のお知らせが届いた。俺が一人暮らしを始めてからもうすぐ二年経つのだと思うと、時間の流れの早さを感じる。
引っ越すか、このままここに住み続けるか。俺はとても悩んでいた。
俺が大学三年生で、健人さんが社会人一年目。健人さんはA県の教員採用試験に合格し、今は英語教諭として県立高校に勤めている。健人さんは就職を機に引っ越したものの、A大の最寄駅から一駅分の距離のため、そこまで遠くなったわけではない。だから大丈夫だろうと俺はたかを括っていた。しかし、学生と社会人では生活リズムが違う。時間が合わなくなり、なかなか会えなくなった。
「できるだけ早くうちに泊まりに来てくれませんか? 限界です。夕食をごちそうしますからお願いします。日中用事があるのなら、寝に来るだけでも構いませんので」
四月の三週目の月曜日、健人さんが音を上げ、電話をよこした。学生時代はほぼ毎日会っていたから、急に会えなくなって寂しくなったのだと思う。俺も寂しかった。その話に飛びついて、その週の土曜日に健人さんちに泊まりに行くと、健人さんが俺のそばにぴったりと張り付いて、離れてくれなくなった。
「悠里、どこ行くんですか? 僕を置いて行かないで!」
「トイレだってば」
「一緒に――」
「だめ! すぐ戻ってくるから!」
親にくっついていないと不安な子供みたいに、健人さんがぐずる。前までもその気配はあったものの、ひどくなっている。会う頻度が低くなったせいだろう、ということで、毎週末はどちらかのアパートに泊まるというルールができた。最初の一、二回は健人さんがべったり、という感じだったが、六月を過ぎたあたりからだんだん落ち着いてきた。お互い忙しくて、本当に寝に行くだけのこともあったけど、それでも健人さんは満足するらしかった。健人さん曰く、「悠里の供給が僕の需要に追いついてきた」らしい。意味は分からないが、健人さんがニコニコしていたから深く追究しなかった。
そんな感じで、どうにか秋まで過ごしてきた。今のままでも不満はないが、健人さんが学生だった時と同じように、学校帰りにふらっと寄ってご飯を一緒に食べる、ということができなくなったのは少し寂しい。
三年生になって授業よりも実習が増えたし、これからもっと忙しくなる。つらいけど、生活のためにはアルバイトをやめるわけにはいかない。その中で健人さんとの時間を捻出するのは結構体力的に厳しかった。少しでも近くに引っ越して健人さんと会う時間を確保しようかなと思ったものの、引っ越しにはお金がかかる。体力とお金どちらをとるか。これが最近の悩みの種だった。
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